野球善哉BACK NUMBER
1度も打席に立てず交代した1年生。
霞ヶ浦・宮崎莉汰の成長を祈る。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2019/08/07 14:45
霞ヶ浦の甲子園は、履正社に敗れて終わった。この試合が、彼らの未来にとってプラスの経験になることを祈る。
監督「いろんなことを考えて決断した」
高橋監督の起用法に対して、全面的に異論を唱えたいわけではない。
履正社の先発投手が左の清水大成だと読み切り、その後も右投手が途中登板してくるだろうという予測を立てた中での起用だった。6回の反撃では代打も成功している。
総力戦を最初から想定していたわけではないというが、日頃から選手同士の競争を活性化させていたことが、次から次へと選手を送り出して8点のビハインドを接戦へと持ち込む力になったことは間違いない。
ただ、宮崎はエラーをしたまま甲子園を去ることになる。
「(宮崎の)起用には迷いはありました。いろんなことを考えて決断したんですけど、やっぱり、ミスはいただけないですね」
高橋監督は記者団に対してそう最後に口にした。
宮崎自身は、前を向いていた。
甲子園では、勝つために非情な采配を振るわなければいけないときがある。それでも、その采配の効果をプラスにするためには、選手の未来に対していい方向づけをする必要があるだろう。
どんな試合でも起用の責任は監督にあるが、大観衆の前でミスをした直後に交代させることへの責任も存在するのである。
「まずは守備をしっかりできるようになって、それからもっと強い打球を打てるような打者になりたい。走者がいるときは返し、いないときはチャンスメークできる。そんな打者になりたいです」
宮崎が前を向いてそう決意を口にしていたことがせめてもの救いだ。