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津田学園エース前佑囲斗が完投勝利。
「誤魔化し」の出来でも大物の予感。
posted2019/08/07 16:30
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kyodo News
身長182センチ、体重87キロ。のエース、本格派右腕の前佑囲斗(まえ・ゆいと)のまるで格闘家のようながっしりとした体つきは、それだけで十分迫力があった。
ところが、初戦となった静岡戦は、最速152キロという触れ込みとは、ほど遠いピッチングだった。前は、こう言って苦笑いを浮かべた。
「全力で投げたのは2、3球。思い切り投げるとどこへ行くかわからなかったので」
152キロをマークした三重大会決勝を「100」とすると、この日の出来は「40ぐらい」だったという。球速もたまに140キロ台中盤が出る程度だった。
特に序盤は何度もボールが抜け、そのたびに首を傾げた。
「フォームが安定せず、小手先でコントロールしているような感じでした」
それでも静岡打線をシングルヒットのみの7安打に抑え、11三振を奪う快投。160球を費やしたものの、3-1で完投勝利を挙げた。
「ほぼ、ぶっつけ本番でした」
2三振を喫した静岡の1番・相羽寛太が振り返る。
「打てそうな感じはあったんですけど、力を入れたときのボールはホップしていた。高めのボールに思わず手が出てしまいました」
静岡監督の栗林俊輔は、こう脱帽した。
「球速以上に、ボールの質がよかった。最初は外が多かったのですが、中盤から内を使い出し、後半は落ちるボールを使ってきた。上手でしたね」
三重大会後、前は、疲労回復を第一優先にし、キャッチボールさえほとんどしなかったという。監督の佐川竜朗が明かす。
「甲子園練習の日と、一昨日、昨日とちょっと投げただけ。しかも、ぜんぜんよくなかった。本人は昨日も実戦練習で投げたいと言ってきたのですが、必要ないと。ほぼ、ぶっつけ本番でした」