野球善哉BACK NUMBER
1度も打席に立てず交代した1年生。
霞ヶ浦・宮崎莉汰の成長を祈る。
posted2019/08/07 14:45
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
一時は8点差がついた試合展開から猛追をみせた霞ヶ浦だったが、9回表にこの日5本目の本塁打を浴びて力尽きた。
「履正社の打線は長打力が本当にあるなと、苦しい試合展開でしたね」
霞ヶ浦・高橋祐二監督は淡々と振り返ったが、ドラフト候補のエース・鈴木寛人が3回途中7失点で降板してからの粘りは評価できる戦いぶりだった。控え投手の2人を除く16人がグラウンドに立つ、まさに総力戦での猛追劇だった。
だがその中でたった1人、スタメン出場しながらほとんど何もできないまま終わってしまったのが、5番・ファーストで抜擢された1年生・宮崎莉汰だった。
「甲子園の雰囲気に飲まれているなと思って代えました」
1度も打席に立つことなく交代。
試合開始から、宮崎はいつものプレーができていなかった。
まず1回表、エースの鈴木が2本の本塁打を浴びながら2つの三振を奪って2死。そして5番の内倉一冴を一塁ゴロに打ち取ったはずが、一塁手の宮崎がこれを弾いてしまう。失点には繋がらなかったものの、2点ビハインドがある中で流れを悪くしかねないミスだった。さらに、続く6番・野口海音の打席でもファールフライの目測を誤ってアウトにできなかった。
試練は続いた。2回表、2死二塁のピンチからショートへのゴロが飛び、遊撃手の小田倉啓介がワンバウンド送球。これを宮崎が後逸して1点を献上したのだ。
ここで高橋監督は宮崎をベンチに下げた。
霞ヶ浦の1回の攻撃は4番で終わっていたので、宮崎は打席に立つこともなく交代させられたことになる。いわゆる懲罰交代にも見える采配だった。
高橋監督は交代の理由をこう説明した。
「履正社の投手が左と右の2枚いるということで、左投手の時に宮崎で、右投手が来たら左打者に代えようというつもりでスタメン起用しました。打席が回ってきていませんでしたが、宮崎の舞い上がり方が普通ではなかったので、バッターボックスに入っても本来のバッティングはできないだろうなという判断でした」