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〈金足旋風の秘密〉吉田輝星が明かす“甲子園を逃した4度目の夏”「暴れました。結局、負けを人のせいにしていたんです」
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph byAFLO
posted2021/08/15 11:03
夏の甲子園100回大会で“金足旋風”を巻き起こした吉田輝星
しかし新チームとなった2年の秋も、秋田大会の準々決勝で角館を相手に7回まで4-0とリードしながら8回、一挙に5点を失い、逆転負け。またもセンバツへの道を絶たれてしまう。
「秋の逆転負けは、自分自身もチームも大きく変わることができた試合でした。3年夏の甲子園での準優勝から逆算したら、あの負けが一番、新チームを強くしてくれたと思います。角館はけっこう強くて、その相手に4-0で勝っていて、あと3点取れば7回コールドだ、3点くらいなら惰性で入るかな、みたいな雰囲気が出ていたんです。そこでコールドにできなくて、こっちの攻撃がゼロ、ゼロと続くうちに、このまま4-0で勝てばいいや、もう点を取らなくてもいいという油断が生まれていたように思います。その隙を突かれて5点を取られた。自分自身も安易に投げていたし、ライトのポジショニングがよくなかったことも逆転される原因になってしまいました」
ライトを守っていた1年生がライン際に寄っていて、右中間の打球に追いつけず、長打にしてしまった。その一打から金足農は逆転されてしまったのだ。
「あの試合の後のミーティングからチームは変わった」
「あれもセンター、ショート、セカンド、キャッチャー、ピッチャーがきちんと指示できていなかったことが悪かったんですけど、自分、負けた直後はそんなふうに思えませんでした。不機嫌をバリバリ、顔に出していましたからね。負けた自分にコメントを取りに来た記者さんがいるのが見えたんで、バスにさっさと乗っちゃったんです。後輩が『取材です』と呼びに来たのに、それも無視(笑)。思い直して取材は受けたんですけど、イライラして、学校に戻ってからは壁に穴をあけたりして、暴れました。結局、負けを人のせいにしていたんですよね。あの試合の後のミーティングからチームは変わったと思います」
甲子園への4度のチャンスをことごとく逃して、残るチャンスは最後の夏の1度だけになった。吉田は3度の悔しい負けを糧に、秋田の厳しい冬に挑むことになる。