炎の一筆入魂BACK NUMBER
崖っぷちから巨人に3連勝。
広島に“飢餓感”は甦るか?
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2019/07/22 17:30
7月21日、巨人にサヨナラ勝ちし、喜ぶ鈴木(中央)ら広島ナイン。
勝ち続けてきた者だけが知る苦しみ。
一方セ5球団は大型補強した巨人を筆頭に、広島からの金星をとるため目の色を変えてシーズンに臨んでいる。
今季の広島に12球団で最も欠けているものがあるとすれば、飢餓感だったかもしれない。もちろん、広島の首脳陣、選手、誰もが優勝したいと強く願っている。ただ、心の底から湧き上がる熱量、執念は3年間苦汁をなめ続けてきた5球団と差が生じても不思議ではない。
4連覇の難しさは歴史が証明している。どれだけ負けても「3連覇」の事実は消えない。その事実は広島に根付く自信であると同時に、悔しさから立ち直る糧にもなるが、一方で、自分を許す逃げ道となってはいけない。勝ち続けてきた者だけが知る苦しみを今、広島は味わっている。
逆境こそが変わるチャンス。
ただ、自力優勝消滅を目前に勝つしかなくなった状況が、変わるチャンスかもしれない。
思えば、5月の快進撃のきっかけも、逆境から生まれた。借金8で迎えた4月17日、熊本での巨人戦。8回裏に巨人の丸に勝ち越し2ランを浴びて崖っぷちに立たされるも、そこから9回に2点差をひっくり返して連敗を止めた。あそこから広島は勢いづいた。チームの精神的支柱の1人、小窪哲也は「勝つことでまとまっていく。熊本での石原さんの一打は大きかった」と振り返った。
再び巨人を相手に復調の兆しをつかんだ。とはいえ、まだ首位巨人に9ゲーム差も離された3位。チームの形が確立されたわけでもなく厳しい状況には変わりはない。とはいえ、楽しみではある。逆境こそが、広島の飢餓感を刺激するのではないかと。これからの戦い、今季の広島が持つ潜在能力が試される。