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カープファンに恋する情熱を学べ。
懐かしくて新しい「実家」のよう。 

text by

西澤千央

西澤千央Chihiro Nishizawa

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photograph byAtsushi Kondo

posted2020/07/13 11:30

カープファンに恋する情熱を学べ。懐かしくて新しい「実家」のよう。<Number Web> photograph by Atsushi Kondo

試合開催日、広島駅からマツダスタジアムに向かうカープロードはファンで埋まる。この日々が戻るのはいつになるだろうか。

広島から離れた場所でファンになる人も。

 広島で何度か耳にした「ここに長く住んでいたらカープファンになるのは当たり前」という言葉。しかし今、全国的にファンを増やしているのがカープだ。遠く離れた場所で、なぜ人はカープファンになるのか。

「元々父が阪神ファンで、私がよく分からないまま好きと公言していた選手は八木裕さんです」と語るのは、千葉県出身の大崎みらいさん(27)だ。

「春の選抜甲子園大会をテレビでみた時に千葉県代表校に丸さんがいらっしゃって。カープに入ったことは知っていたんですが、当初はそれ以上の興味はなかったんです」

 そんな大崎さんがカープにのめり込んだのは2015年。意外な理由だった。

「当時好きだったアパレルブランドとカープがコラボして、ちょうどそのタイミングで友人から観戦に誘われたんです。久々に見た丸選手の身体つきが高校時代と全然違っていてそれにも衝撃を受けました」

 八木裕でプロ野球に触れ、アパレルとのコラボという今っぽい興味と丸の肉体という衝撃を経て、カープ愛に目覚める。人に歴史あり。「カープ女子」という言葉では決してひとくくりにはできない。

「今はとにかくカープのことを勉強してます。ただ、代打の神様は未だに八木裕だと思ってますけど!」

カープファンは家族なんです。

 広島にいたら家族内で当たり前に行われる、カープの血の「伝承」。それを東京で積極的に行っているのが『広島お好み焼Big-Pig神田カープ本店』だ。カープ戦全試合放映はもちろんのこと、月一のぺースでOBらを招いたイベントを開くなど、東京のファンの一大拠点となっている。

「プラットフォームになりたいんです。ファン同士をつなぐ、昔と今をつなぐ、東京と広島をつなぐ場所に」

 そう語るのは、同店を運営する株式会社スマイルリンクル広報の竹内宏和さん(47)。自身も熱烈なカープファンであり、フジTV「黒田マニア王決定戦」、「カープ知識王決定戦」のチャンピオン。広島出身の父親の影響で「10歳からファンになった」という竹内さんも、かつては「隠れキリシタンのように」カープを応援していたという。

「中学生の頃は東京でカープを応援しているのを知られるのが恥ずかしくて、カープ雑誌が買えなかったんです。エロ本とエロ本に『月刊カープファン』を挟んだり」

 しかしそんな経験があるからこそ、新しいファンも古くからのファンも何なら野球に興味のない人も門戸を開いて出迎える。

「野球のこと何も知らなかったバイトの子が、ここで働くうちにカープファンになっていく。お客さんでも若い子がおじさんに昔の選手やコーチの話を聞いて、どんどん詳しくなっていくんです」

 店の中央に飾られた'75年のカープ初優勝時のスコアボードに往年のファンは涙するだろうし、珍しいカープUFOキャッチャーで若いファンは盛り上がるだろう。「ワシらって言うじゃないですか、カープファンは。私たちは家族なんです。良くも悪くも優しい球団だと思う」

【次ページ】 増えるファン、減る応援団。

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