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コパで振り返る王国ブラジルの現状。
代表の足を引っ張る過激なクラブ愛。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byMasaki Shimozono
posted2019/07/18 17:30
ブラジルの優勝で幕を閉じたコパ・アメリカ。だが、開幕戦ではブーイングも起きるなど、逆風も吹き荒れた。
ネイマール不在で優勝も、戦いは続く……。
もっとも、心あるジャーナリストたちも存在する。
戦術分析では国内屈指とされるパウロ・コエーリョ・ヴィニシウス氏は今大会の結果にかかわらず「今のブラジルにチッチ以上の監督は存在しない」とその戦術を賞賛。ブラジルに長年欠けていた長期計画の必要性を常に訴えていた。
絶対的エース、ネイマールを大会直前に負傷で欠きながらも、歴史的な堅守をベースに見事、9度目の優勝を飾ったブラジル。長年の課題だった「ネイマール依存症」を乗り越え、チッチ監督はノルマに近かった優勝を手にした。
ブラジル代表のユニフォームを着た孫を膝に抱いて優勝後の記者会見に臨んだチッチ監督。「今日、私はブラジル代表の監督になれた。この幸せを例える言葉を持っていない」と代表での初タイトルをこう振り返った指揮官の本音である。
ただ、ブラジル代表の監督には常に、サポーターやメディアとの戦いも待ち受ける。
チッチ監督にとっての束の間の凪――。
ブラジル国旗に刻まれているフレーズである「秩序と進歩」。皮肉にもブラジルサッカー界には、最も無縁の言葉かもしれない。