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F・トーレスとの“熱狂の対面”で、
内川聖一が思い出した自分の原点。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKotaro Tajiri
posted2019/07/18 11:30
7月2日の記者会見でF・トーレスにサインをもらう内川。サッカーだけでなく、バレーボールなどの観戦にも訪れるスポーツ好き。
自問自答と地道な努力。
再開初戦だった6月28日の日本ハム戦(札幌ドーム)から10試合連続安打をマーク。7月7日のオリックス戦(京セラドーム)では4打数4安打の固め打ちも見せた。交流戦終了時点では打率.238しかなかったのが、10試合後には.266まで回復させた。
「交流戦が終わって4日間試合がなかったことで、自分の中で頭を整理することができた。あれこれ考えずに来た球に対してシンプルにバットを出して、いい形で振ってやろうという考えにしました」
群雄割拠のプロ野球という世界で19年間も生き抜き、2000本以上の安打を積み重ねてきたのは決して才能だけで成し得たわけではない。なぜ打てたのか、なぜ打てなかったのかと自問自答を繰り返し、その中で薄皮を一枚ずつ剥がすような地道な努力と研究を続けてきたことで今があるのだ。
打てなくなった時の悩みは深かった。
「そんなことが可能なのか分からないけど、感覚を研ぎ澄ませて自分の神経や感情を球場の中に張り巡らせたいなと思うんです。そうしたら自分の思うがまま。ここに打てばこういう風にヒットになるとか、自分で全部分かるようになるんじゃないかって」
そんな究極論を大マジメに語ったこともある。それゆえ、打てなくなった時の悩みは深くなってしまった。
「だけど、自分ってもともとどんな風にバッティングをしてたっけ、と考えた。自分の原点に立ち返った感じですね」
進歩や成長のためには前を向かなければならないが、時には少し立ち止まってみたり、過去の自分を見つめ返すことも大切なのかもしれない。
そしてトーレスと良きタイミングで出会ったことで、内川はまた純粋な心で球場に立つことを思い出したのだろう。