プレミアリーグの時間BACK NUMBER
英国で愛された“2m”FWクラウチ。
引退後も引く手数多なユーモアさ。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto Press
posted2019/07/19 17:00
ストーク時代、“太くて小柄”なシャキリ(右)と喜びを分かち合うクラウチ。英国を沸かせた「ビッグプレイヤー」がスパイクを脱いだ。
川口能活に勝利をプレゼント。
思い出すのは2001-02シーズン前半のマンチェスター・シティ戦。ポーツマス加入直後の川口能活が好セーブを披露したホームゲーム。日本人GKに勝利をもたらしたのが、相手GKとDFにサンドイッチされながらもクロスに合わせた、長身ストライカーによる逆転のヘディングゴールだった。
また同シーズン後半のチェルシー戦。アストンビラに引き抜かれて間もないクラウチは、プレミア最終節でウィリアム・ギャラスとマリオ・メルキオットの両DFの間に入り込むと、CKをミートして、教科書通りの叩き付けるヘディングで先制点を決めた。
ペップにもフェデラーにも愛嬌たっぷりに。
本人に無念や未練は感じられない。
引退発表を受け、ストーク時代のクラウチに華麗な20mボレーを決められた因縁もあるマンCが、公式アカウントで「あのゴールは忘れない」と題した前途を祝すツイートを寄せた。ボレーがゴールに飛び込む直前に自軍のトッテナム戦の得点シーンに切り替わるという、いたずら映像付きだった。それに対しクラウチは、「ペップ(・グアルディオラ)から連絡があるかなとも思ったけど待っていられなかった」とのジョークで切り返している。
引退直後の週末は、テニスのウィンブルドン選手権の最終日だった。男子シングルスの決勝で37歳のロジャー・フェデラーが、史上最長の争いの末に最年長王者の座にあと一息まで迫っていた。すると、プレミア通算100得点の史上最年長記録保持者でもある38歳の元FWは、すかさず「ロジャーがあそこまでやれるなら自分だって!」とコメントを投稿。冗談交じりに「カムバック」のハッシュタグまで添え、自身のフォロワーと、オフシーズン中のネタに飢えているメディアを楽しませた。
クラウチの人気は現役を退いても衰えそうにない。今後は、解説に限らずテレビ出演も増えるだろう。どうやら、当人が「出番が多くて辛い」とでも呟き、出場試合が限られた昨季の自分をネタに人々の笑いを誘う「引退1年目」となりそうだ。