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安西幸輝が1年半で得た野心と愛情。
「鹿島のこと好きになっちゃった」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2019/07/10 18:00
安西幸輝は鹿島を背負ってポルトガルに飛ぶ。内田篤人のように、いつか故郷に錦を飾るために。
鹿島に来て1年で代表、1年半で海外へ。
そして迎えた今季、安西は開幕から、鹿島で鍛えられた守備だけでなく、自身の特長を意識した攻撃的なプレーを披露。3点というゴール数だけでなく、得点を演出する仕事にも貢献している。3月には日本代表にも選ばれて2試合に出場した。
「代表に招集されて、スピード感の違いを実感しました。でも、海外でプレーしている選手にとってはそれが普通なんです。この経験も、海外へ行かなくちゃいけないという気持ちの後押しとなりました」
6月に、ポルティモネンセが興味を持っているという話が届いた。上下動と得点に絡むシーンなど、自身が意識したプレーが評価された。
安西自身、鹿島入り1年での代表入り、1年半での海外移籍は想像してはいなかった。しかし、それだけ密度の濃い1年半でもあった。環境を変えたことで新たな欲を刺激され、成長とその手ごたえがあった。
「好きになっちゃったから、鹿島のこと」
「J1クラブの生え抜き選手が海外へ移籍する例が多いですけど、僕のようにJ2からステップアップしていく例は少ない。鹿島には申し訳ない気持ちもあります。でも、行けるタイミングを逃したら行けなくなる。シーズン途中にもかかわらず送り出してくれたクラブ関係者、監督、チームメイトに感謝しています。
サポーターにキチンと挨拶ができないのは残念ですし、申し訳ない。短い間でしたけど、鹿島から出ていくからには海外でしっかりと活躍して、日本を代表するサイドバックになって、また鹿島のユニフォームを着れるように頑張りたい」
わずかな在籍期間だったが、「好きになっちゃったから、鹿島のこと」と安西は照れ臭そうに話した。それでもだからこそ、チームメイトへの挨拶では、胸をはろうと決めた。
「移籍が決まったときはこみ上げるものもありました。でもここで泣いて行くのは、覚悟が弱すぎると思う。海外へシーズン途中で行くと決めたんだから、しっかりとハキハキしゃべって行こうと思っていた。日本では、周りが僕のキャラクターを理解してくれたし、多少調子が悪かったとしても起用してもらえることもあった。でも、ポルティモネンセへ行けば、僕は助っ人の立場。相当の覚悟を持ってやらないといけない」