球体とリズムBACK NUMBER
マリノスのアイドル天野純の旅立ち。
ベルギー2部で英雄になり殻を破れ!
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/07/11 11:15
“虹をかける”とも表現されるキックセンス。天野純にはベルギーの地でも鮮やかな軌道を描いてほしい。
「もっと前で得点に絡む」意欲。
個人的には、中盤の低い位置でかつてのアンドレア・ピルロのようにピッチ全体を支配するような“英雄”を目指すのも面白いと考える(そのためには、大分戦で見せたような精度にムラのあるフィードを改めなければならない)。
けれども彼は、「もっと前で得点に絡む」姿を追い求めたいと言う。
ならば、技術やキックだけでなく、攻撃性、積極性、落ち着き、相手との駆け引き、そして何より心身の強さなど、改善すべき点はさらに多くなる。同じくレフティのダビド・シルバやベルナルド・シウバあたりが目標となるだろうか。いずれにせよ、彼が挑む地平はとても高い。
移籍に際し、ポステコグルー監督からは「特に何も」言われなかったそうだが、ヘッドコーチのピーター・クラモフスキーは「片道切符のつもりで挑戦してきてほしい」と声をかけた。
「最初は特にメンタルが問われることになるはず。でもそこを乗り越えて、成功を掴んでほしい。ただただ欧州を経験し、1年後に戻ってきて仲間にそれを伝えるだけでは、彼自身にとってあまり意味はないと思う」とマリノスの練習を取り仕切るコーチは言う。「技術面は問題ないはず。それをどう生かすかだ」と期待を込めながら。
見たことのない世界に飛び込みたい。
昨季の国内リーグで最下位に終わったロケレンは新シーズン、2部を戦う可能性が高い(2部を制したメヘレンに八百長や詐欺容疑があり、1部残留が検討されているという)。そんなクラブで成長できるのかと疑う向きもあるだろう。まして横浜は今季、15年ぶりのリーグ優勝を狙える好位置につけている。
それでも、「ここで行かなければ、一生後悔すると思い、移籍を決断した」。天野は壮行セレモニーで、雨の降る三ツ沢球技場に残ったたくさんのファンにそう伝えた。あえて厳しい道を選択したアイドルに、サポーターは「アマジュン、頑張れ!」とエールを送っていた。
この決断の裏には、昨年9月に初めて代表に選出された時に感じた「海外組の余裕や自信にみなぎる姿」があるという。
「Jリーグのレベルがどうこうではなく、やっぱり海外に行かないとわからないことなんだろうなと痛感しました。それにまだ見たことのない世界に、飛び込んでみたい」