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初戦敗退、大坂なおみの深い悩み。
何十億も動く巨大ビジネスと重圧。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2019/07/02 18:00
ウィンブルドンで初戦敗退となった大坂なおみ。個のスランプを抜け出て、さらにスケールの大きな選手となれるか。
変化したはずの敗戦後の態度が。
グランドスラム・チャンピオンへの階段を一気に駆け上がった昨年、大坂に見られた大きな変化の1つは、敗戦後の態度だった。
それ以前は、この日のように言葉も出ないほど激しく落胆したり泣いたりすることが多かったが、敗戦の中にもポジティブな要素を引き出して前向きな言葉を語るようになった。
ところが、最近はどうだろう。
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バーミンガムでは会見をすっぽかしたとニュースになった。すっぽかしたい気持ちはわかる。ひどい負け方をしたあとに記者たちの質問に答えるなど、不愉快きわまりないだろう。
しかし、その義務は彼女たちが手にする莫大な賞金の一部でもあり、トッププレーヤーに求められるプロ意識は非常に高度だ。
何十億ものお金が周りで動く重圧。
躍進のカギになったはずの強い心が、今は崩れている。退席するまでの英語のやり取りの中で、大坂は不振の原因を推測するいくつかの質問を全て否定した。
――コーチを替えたことと関係があるのでは?
「まったく関係ないと思います」
――まだ若いから安定感が足りないのか?
「私はどんなことでも年齢のせいにはしません」
そして、立ち直るために必要なことは「楽しむこと」だと話した。
「どうやって楽しむか、どうプレッシャーを取り除くのか……。その方法をどうにかして見つけることができればと思う」
昨年の全米オープンに続いて今年の全豪オープンも制し、世界1位になった大坂の周囲はあまりにもめまぐるしく変化した。チーム編成のことだけではない。
新しいスポンサー契約が次々に舞い込み、ウェア契約はアディダスからナイキに変えて装いが変わった。金銭を巡って子供時代のコーチから訴えられもした。20歳そこそこの若さで、何億、何十億というお金が周りで動く重圧など、私たちが理解できるはずもない。