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初戦敗退、大坂なおみの深い悩み。
何十億も動く巨大ビジネスと重圧。
posted2019/07/02 18:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Mano
スランプは深刻かもしれない。
世界ランク1位の座を失ったばかりの大坂なおみのウィンブルドンは、わずか1試合で幕を閉じた。
相手は前哨戦のバーミンガムで敗れたときと同じ、世界ランク39位のユリア・プティンツェワ。163cmと小柄ながらしぶといストローカーだ。クレーコートのような遅いサーフェスを得意とする24歳に、大坂は6-7(4)、2-6でストレート負けを喫した。
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38対7。両者のアンフォーストエラーの数だ。
いくら相手の2倍のウィナーを決めても、5倍以上の凡ミスをおかしては勝てない。「彼女がとてもうまくいろいろなボールを混ぜてきた」と話した通り、それがプティンツェワの作戦だった。
「できるだけ走らせて、揺さぶって、なおみに気持ち良くプレーさせないようにと考えていた」
「もう泣きそうだから」と退席。
大坂は芝で大切な〈アグレッシブさ〉を最後まで忘れず攻めたが、正確性や安定性を欠いた。修正能力もまったく発揮されなかった。
「芝はクレーよりももっと予測ができない。毎日が学習」と話していたが、芝でのテクニックの問題だったのだろうか。やはりそれ以上にメンタルの問題が大きいのでは……。敗戦直後の記者会見でその答えを見たような気がした。
今にも消え入りそうな声でなんとか受け答えをしていたものの、5分ほど経った頃、隣に座る司会の女性に「部屋を出ていいですか? もう泣きそうだから」と告げて突如退席。落ち着き次第インタビュールームに戻るよう別室で関係者らが説得するも、結局戻って来ることはなかった。