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サニブラウンの言葉でわかること。
100m走はなんとも緻密な競技である。 

text by

生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byNanae Suzuki

posted2019/07/01 18:30

サニブラウンの言葉でわかること。100m走はなんとも緻密な競技である。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

直接対決で、日本最速を証明したサニブラウン。彼の目は世界選手権を視野に捉えている。

サニブラウンのターゲットは世界選手権。

 そのサニブラウンだが、果たして今季はどこまで成長を見せてくれるだろうか。

 今季の最終ターゲットは世界選手権ということになるが、世界には多くのライバルがいる。アメリカのカレッジで戦うサニブラウンは、

「全米大学選手権ではボコボコにされました」と振り返っていた。

 サニブラウンを圧倒したのは、100mで9秒86、200mでは19秒73という素晴らしいタイムで2冠を達成したオドゥドゥルだ。彼はテキサス工科大の学生で、ナイジェリア国籍を持っており、世界選手権での再戦が期待される。

 全米大学選手権でのパフォーマンスを見る限り、オドゥドゥルとの差は大きいが、サニブラウンがひとつひとつの課題を克服し、コンディションを整えたうえでの勝負が見てみたい。

求めているのは10秒弱の“再現性”。

 サニブラウン自身、勝つための道筋は見えているようだ。

「大学では、いい練習が出来ているので、今後はその“再現性”を高めることだと思います」

 わずか10秒ほどの勝負には、やらなければならない仕事が多く、ひとつのことに集中すれば、他のことがおろそかになることもある。

 フロリダ大のトラックでは、フェイズごとには理想に近い動きが出来ているのだろう。パーツをコーディネートし、最高の動きを連動させていく。

 100mを完璧に走ることは不可能に近いが、サニブラウンはそれに挑んでいる。

 2019年6月は全米大学選手権と、日本選手権を走り、疲労度はピークに達しているようだ。

「アメリカに戻って休養して、世界選手権に向けてしっかりと練習を積んでいきたいと思います」

 ひと夏を越えて、20歳の若者はどんな成長を見せるだろうか。

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サニブラウン・アブデルハキーム

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