松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
修造、感動!ボッチャ廣瀬隆喜は
審判の母、チームと共に戦い続ける。
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byYuki Suenaga
posted2019/07/08 07:00
左から母・喜美江さん、アナリストの渋谷さん、廣瀬さん、マネジメントの三浦さん、そして修造さん。修造さんも「チーム廣瀬」の一員のようだ。
廣瀬「リオで銀だったので、その上は金しかない」
松岡「その差は大きいですね。でも、日本チームだって合宿はあるでしょ」
廣瀬「日本は今、1カ月とか期間を区切って、各クラスごとにわかれて強化をしています。リオの頃からサポート体制も変わってきて、こまめに合宿をしたりコートを用意してもらったりしてきた。その成果があの団体銀メダルだったのかなと。あとは私のようにチームで支えてもらったり、良きライバルである杉村(英孝)にもパーソナルコーチがついています」
松岡「あのメダルは廣瀬さんにとっても日本チームにとっても夢だったと思います。でも、それが頂点じゃなかったことに関してはどうとらえてますか。銀メダルで十分と思ったのか、それとも悔しいと思ったのか」
廣瀬「実際には複雑ですね。もちろんメダルが取れたのは嬉しいですが、タイには負けてしまったので。嬉しさ半分、悔しさ半分」
松岡「あのメダルでかつてない盛り上がりを感じたと思います。空港での出迎えとか、周りの皆さんの笑顔とか。それについては」
廣瀬「本当に日本が盛り上がっていると実感したのは、帰国してからです。出迎えがすごかったし、メディアの方々もたくさんいて、多くの方に声をかけてもらったのはすごく嬉しかったです」
松岡「おそらくそういう嬉しさが、今の勝ちたいという意欲につながっているんでしょうね。しかも次は東京ですから、廣瀬さんの意気込みも相当大きいはず。そこでどういったことを伝えたいと思ってますか」
廣瀬「もちろんパラは4年に1度の大きな大会ですし、自国だからたくさんの人が応援に来てくれると思う。できれば生で観戦し、ボッチャもそうですけど、パラスポーツの魅力を知ってほしい。皆さんからの応援を、僕たちは結果で返していきたいです」
松岡「個人的な目標は? あまり言いたくなければ言わなくても大丈夫ですけど」
廣瀬「リオで銀だったので、その上は金しかない。金を獲るために今、何をすれば良いか。それだけを考えてます。自分たちのミスをどれだけ0に近づけて、タイのちょっとした隙につけ込めるか。自分たちが先にミスをしちゃうと勝機がなくなってしまうので、少しでも技術を上げて、進化した姿をお見せしたいです」
松岡「お母さんも楽しみですね」
その呼びかけに、母親の喜美江さんが笑顔で応えた。聞けば、喜美江さんは少しでもボッチャを理解しようと、廣瀬さんがボッチャを始めてすぐ、レフェリーの資格を取ったとか。実際に国内の試合では笛を吹くこともあるそうだ。
松岡「お母さん! それはすごいフォローですね」
喜美江さん「国内資格だけですけどね。せっかくサポートするんだから、ルールくらいは知っておかないとダメだと思って、2年目に資格をとりました。ルールを知ると、何がペナルティかもわかるので」
松岡「じゃあ、2020年の東京は親子で目指しましょうよ。お母さんは国際審判の資格をとって!」
喜美江さん「いやいや、英語が話せないからそこは無理です……」
松岡「まだ時間はありますよ! あ、時間がないのはむしろこっちのインタビューの方だ(苦笑)。あと2つ3つ、最後に質問をさせて下さい。
廣瀬さんが障害を負ったときのお話は、聞きました。それを乗り越えてきた過程についても話をしていただいた。ボッチャと出会って、一所懸命練習して、今では多くの人に元気や笑顔を与える存在になってます。廣瀬さんにとって、ボッチャとはどんな存在なのですか」
廣瀬「私ももう、今年で16年目。これだけ続けられた競技も他にないですし、ボッチャは今、人生の一部になっていると思います。逆にボッチャと出会っていなければどんな人生になっていたか。現役を終えたとき、きっと考えるでしょうね」