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セレソンに吹き荒れるブーイング。
コパで問われるチッチ監督の手腕。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byGetty Images
posted2019/06/27 07:00
“安定政権”に逆風が吹き始めたチッチ。コパ・アメリカを制し、国民を結果で納得させられるか。
「チッチは、いい仕事をしている」
低調だったボリビア戦とベネズエラ戦とは一転、ペルー戦で圧勝した直後、コリンチャンスのホームスタジアム、イタケロンには「オレ、オレ、オレ、オレー、チッチ、チッチ」と指揮官を讃えるチャントが鳴り響いたが、そんなものは束の間の平和であることは百戦錬磨のチッチも承知済みである。
目先の結果で批判しがちな記者も少なくないブラジルだが、王国屈指のジャーナリスト、パウロ・ヴィニシウス・コエーリョ氏にチッチの評価を尋ねてみた。
コエーリョ氏は「チッチは、いい仕事をしていると考える。ブラジルではワールドカップで負けると、監督を代えるだけで後に繋がってこなかった。いい例が1996年ユーロのフランスだ。フランスは大会で勝てなかったが、継続性を重んじたことが2年後のワールドカップ制覇につながった」と言う。
ブラジルサッカー連盟はすでに2022年のカタール大会までチッチと契約を更新。コパ・アメリカの結果に関わらず、チッチに指揮をとらせる意向を示しているが、優勝を逃せば一気に懐疑論が噴き出してくるはずだ。
コエーリョ氏は続投を支持。
もし、ブラジルが優勝を逃し、チッチが解任された場合の最有力候補をコエーリョ氏に聞くと、キッパリとこんな答えが帰ってきた。
「ペルー戦はロシア大会後の中でベストマッチだった。私は今大会の結果に関わらず、チッチが監督を続けるべきだと考えているので、後任候補の名前を挙げるわけにはいかないね」
近年、タレント不足が指摘されるブラジルサッカー界だが、それ以上に深刻なのが戦術に長けた監督の不足である。コエーリョ氏の答えにも納得だ。