プロ野球亭日乗BACK NUMBER
松井秀喜vs.高橋由伸の構図で、
岡本和真と大城卓三を見る原監督の策。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2019/06/22 09:00
6月14日の日本ハム戦では、岡本(4番)が大城(5番)の二塁打で生還している。近い打順の2人は競い合うように活躍し、巨人に恩恵をもたらしている。
ライバル同士が急成長した記憶。
高橋は、2年目の'99年には開幕から5番に座り、いきなり3試合連続本塁打を放つと、4月は打率4割3分3厘のロケットスタートで月間MVPを獲得。5月5日には2年目で4番に抜擢され、その後もコンスタントに本塁打を打ち続けてタイトル争いを演じたが、シーズン終盤の9月14日に飛球を追って外野フェンスに激突して鎖骨を骨折。最後に戦線離脱したが、それでも打率3割1分5厘、34本塁打、98打点をマークと、2年目にして華々しい結果を残したシーズンだった。
一方で松井の'99年は、高橋と競い合うように本塁打を量産し、打率3割4厘で本塁打は初の40本の大台に乗せる42本を放って“本格化”へのきっかけとなるシーズンとしたのである。
「松井はあの年からバッターとして違うステージに踏み出していったと思いますね。見ていてそう感じるシーズンだった。その陰にはやっぱり高橋という存在があったということだと思います。選手が成長していく過程には、そういう存在がチーム内にいるということも、大切な要素なんです」
当時は長嶋茂雄監督(現終身名誉監督)の下で野手総合コーチ1年目だった原監督は、そんなライバル2人の成長譜をつぶさに見て感じてきた。
なぜ坂本勇人ではなく大城卓三なのか?
だからこそだ。
「素質は松井級、もしくは松井を上回るかもしれないスケールがある」と評する岡本にとって、刺激となるチーム内のライバルを昨年の監督復帰からずっと探してきた。
それは先輩の坂本勇人内野手ではない。
もう少し年齢も近く、これから主軸打者としてチームを担う存在へと一緒に坂道を登っていくような選手でなくてはならない。
その1つの答えと期待するのが、年齢的には岡本の3つ年上となる大城という打者だったのである。
大城が初めて「5番・一塁」で起用されたのが5月26日の広島戦だった。その後は昨年からコンビを組んできたCCメルセデス投手が先発するときにマスクをかぶるが、それ以外では一塁か指名打者でほぼ全試合、5番を任され続けて、交流戦でのチームの優勝争いの一翼を担ってきた。