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“日本の4番”を争う男たちの頭の中。
筒香嘉智、吉田正尚のホームラン観。
text by
中川聡(Number編集部)Sou Nakagawa
photograph byShigeki Yamamoto
posted2019/06/14 17:30
すでに2ケタ本塁打を記録している吉田正尚、筒香嘉智。ともに4番としてチームを支える。
「自分のスイングをしていれば入る」
173cmという身長は、決してプロ野球選手の中で大きくはない。しかしその体躯から放たれる打球は力強く飛んでいく。フルスイングしてかっとばす、その姿に気持ちよさすら覚えるが、意外にも本人にはそういった自覚はないようだ。実際、取材の中で多く聞かれたのが、「自分のスイング」という言葉だった。
「欲しいときには長打を狙いに行くときもありますけど、常に自分の良いスイングをしていれば(スタンドに)入るという感覚なので、そのスイングを心がけるというところですかね」
自分の理想形を作り出せば、自然と本塁打はついてくる。怪我をしたからといって、自らの求める打撃像を変えることなく、愚直に求める道を進み続ける。
「もっともっと打てると思ってますね。失敗があるわけなんでそこの確率を少しでも上げていくスポーツだと思うので、もっといいものをと向上心を持っていければと」
その日の打席は頭に「残ってるんで」。
もう1人、ホームランと言えば欠かせない選手に取材を行った。
筒香嘉智――。2010年に横浜高校からドラフト1位で横浜ベイスターズ(当時)に入団。その年から2年連続二軍で本塁打王を獲得すると、'15年にはチームの4番に定着した。
デイゲーム前練習のさらに前、朝8時過ぎ。そんな早朝から筒香嘉智は取材に応じてくれた。
驚くべきはその記憶力だ。自らのベストホームランを'16年にヤクルト・小川泰弘投手から放った4号本塁打だと語った筒香に、当時のことを尋ねた。
「その前の3号、誰から打ったか覚えてますか? 動画見ますか?」
一拍置いた後、筒香は力強く答える。
「いや、大丈夫です。(頭に)残ってるんで」
まるで戦い終えた棋士が感想戦をするがごとく、相手投手やホームランの感触、ベンチでの会話を事細かに覚えていた。
筒香といえば、ライトスタンドへの目の覚めるような豪快な1発も魅力的だが、レフトスタンドにも“普通に”放り込めるのがその真骨頂だ。その境地に至る過程を自らの言葉でしっかりと説明してくれた。
「体の使い方はあんまり変わってないんですけど、ポイントと手の伸びていく角度が違いました。(3号では)ちょっとこすっていたんですけど、(4号では)逆方向へも引っ張るような感覚でした」