球体とリズムBACK NUMBER
若き才能が集うオランダが蘇った!
イングランド撃破で欧州一に王手。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2019/06/08 11:30
ロシアW杯出場権を逃すなど低迷していたオランダだが、アヤックスのCLでの躍進が象徴するように有望株が続々と出てきた。
デリフトがセットプレーで汚名返上。
後半はよりオープンな展開となる。
イングランドがサンチョのフリーのヘディングでGKを強襲すると、オランダはカイル・ウォーカーからボールを奪ったデパイが強烈なシュートで応戦。雨に濡れたピッチの影響もあってか、両チームの選手とも足を滑らせたり、キックがずれたりして、どちらも守備網を完全には崩せない。
そんな状況では、セットプレーがモノを言うことになる。
オランダがCKを得ると、右からデパイが入れた鋭いボールに、デリフトがニアサイドでジョン・ストーンズとウォーカーに競り勝ってパワフルなヘッドを叩き込んだ。19歳のCBは失点シーンの汚名を返上したのである。
その後、イングランドが最終ラインからベン・チルウェルが左サイドを駆け上がり、軽やかな連係を経て、最後は途中出場のジェシー・リンガードがネットを揺らすも、VARの判定でオフサイドに。それもあって、後半の追加タイムは7分もあったが、決着はつかずに延長へもつれ込む。
最終ラインのミスが得点に直結。
互いに長いシーズンを戦った選手が多く、どちらも疲労の色が見え始めるなか、先制点と同様に最終ラインのミスが命取りとなる。
97分、ストーンズがボールを持ってターンしたところ、緩慢な動きを察知したデパイがさらってシュート。GKジョーダン・ピックフォードが一度は懸命に弾いたが、こぼれたところにクインシー・プロメスが詰めて、最後は滑り込んだウォーカーの足にあたってネットに収まった。
さらに延長後半にも、イングランドの最後尾でバークリーのバックパスがずれ、受け取ったデパイが折り返し、プロメスが押し込み、勝負は決した。
この試合の計4得点のうち、バックラインのミスから生まれたものが3点。しかし、それは咎められるべきものというより、どちらもボールを大事にしようとしたからこその結果とも言える。
「選手たちには、重圧を受けてもなるべく最後尾から繋ぐように指示した」とイングランドのガレス・サウスゲイト監督は試合後に話した。