球体とリズムBACK NUMBER
若き才能が集うオランダが蘇った!
イングランド撃破で欧州一に王手。
posted2019/06/08 11:30
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
古都ギマラエスにイングランド・サポーターたちの歌声が響く。キックオフの数時間前から街を占拠したフットボール発祥地のファンは、会場のエスタディオ・D・アフォンソ・エンリケスのスタンドも7、8割がたを埋めた。
UEFAネーションズリーグ準決勝2日目、オランダとイングランドの一戦は後者のホームのような雰囲気で始まった。オランダがボールを回すたびにイングランド・サポーターのブーイングが轟く。特にリバプールでチャンピオンズリーグを制したばかりのビルヒル・ファンダイクがボールを持つと、そのボリュームは増した。
それでもオランダは自分たちのやり方を貫く──ファンダイク、マタイス・デリフトのCBと、フレンキー・デヨングとマルテン・デローンのボランチでパスを回し、相手のほころびを探す。そこから自由に動くセンターフォワードのメンフィス・デパイと、トップ下のジョルジニオ・ワイナルドゥムがボールを引き出し、両SBが幅を取る。
流れに反してイングランドが先制。
対するイングランドは、ハイプレスでオランダのテンポを壊そうとする。相手の司令塔デヨングは、ファビアン・デルフら中盤の選手たちがケア。だがオレンジの21番は観る者にも予想のつかぬコースにパスを通し、ドリブルで持ち上がり、守備時にはスマートなチャレンジで相手からボールを奪う。
アヤックスのチャンピオンズリーグ4強入りの原動力となり、来季からバルセロナでプレーすることが決まっている現在最高のセントラルMFの1人が生み出すリズムにより、序盤はオランダがやや優勢に試合を進めていった。
だが最終局面をなかなか崩せずにいると、流れに反してイングランドが先制する。オランダの最終ラインでデリフトがトラップミスしたところに、マーカス・ラッシュフォードが猛然と駆け込むと、デリフトが足をかけてしまい、イングランドにPKが与えられる。これをラッシュフォードが自ら沈めて、大勢のサポーターを歓喜に導いた。
勢いづくイングランドは、ロス・バークリー、ジェイドン・サンチョ、ラッシュフォードの見事な連係からボックス内でチャンスを掴みかけるが、デンゼル・ダンフリースの間一髪のブロックに遭ってシュートは打てなかった。