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NIPPOが劇的区間V、初山も完遂。
ジロで躍動した日本人の舞台裏。
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byBettini / NIPPO - Vini Fantini - Faizane
posted2019/06/08 08:00
第18ステージで逃げ切ったNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネのダミアーノ・チーマ。チームとして初の区間賞を獲得した。
裏方のスタッフも奮闘。
奮闘したのは初山だけではない。選手2人のほか、監督、マッサージャー、メカニックら計5人の日本人スタッフもジロに関わり、過酷な3週間のレースを戦い抜いた。
裏方の仕事は朝から晩まで続く。
マッサージャーの坂本拓也と森井章人はレース後に2時間近くかけて選手の筋肉をほぐすことだけが仕事ではない。分担して多くの雑務をこなす。朝一番からチームカーの中を掃除し、スタッフ用のお手製ランチボックスを用意。車でコースを先回りし、補給地点でボトルなどを選手に手渡すのも彼らの役割だ。並行して宿泊ホテルに直行して部屋割りを決め、チーム関係者の荷物を部屋まで運び入れたりもする。
メカニックの西勉、南野求も大忙し。自転車の事前のメンテナンスやチューニングだけではなく、チームカーに同乗し、メカトラブル、パンクなど不測の事態に備えている。さらにチームカーを洗車したり、多くの雑務もこなす。
総勢20人に近いスタッフたちは、レースをゆっくり見ている暇はない。
「一丸となり、全員で勝つんだという気持ちを持って仕事ができたので、チームとして成果を残せたんだと思います」
水谷監督の言葉には実感がこもる。
残されたライダーは5人。
第18ステージではチーム3度目のジロ出場にして、初の区間優勝を成し遂げた。水谷監督は第9ステージを終えた最初の休息日に“ベネチアの歓喜”を暗示するようなことを話していた。
「総合優勝を狙うトップチームとの真っ向勝負はできないが、逃げに乗って逃げ切るところに注目してもらいたい。終盤は超級ステージ前後の中級ステージなど優勝候補チーム勢との駆け引きが有るので、そこを上手くすり抜けてステージ優勝を狙えれば」
第17ステージで超級山岳を走り終えた翌日だった。5月30日の木曜日は、イタリア北部の山岳地バルダオーラからベネチア郊外のサンタマリア・ディサーラまでを走る222キロのスプリントステージ。初日に大会を去った西村大輝を含め、この時点で計3人がリタイアしており、チームに残されたのは5人のライダーのみ。
レース前のミーティングでは水谷監督、マリオ・マンゾーニ監督らスタッフ陣は選手たちの疲労を考慮し、今大会最後の逃げの作戦を立てていた。