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小学生サッカーでも飛び交う大金。
喜熨斗勝史の中国育成改革・後編。 

text by

西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2019/05/26 11:05

小学生サッカーでも飛び交う大金。喜熨斗勝史の中国育成改革・後編。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

喜熨斗勝史は現在、広州富力でコーチを務めている。大金が動く中国サッカーのダイナミズムを体感する貴重な日本人だ。

世界で戦える選手が20人出たら。

「中国の人口は日本の約10倍。今すぐに、日本サッカーが中国サッカーに抜かれることはないかもしれません。ただ、10年、20年後は正直わかりません。各クラブの育成は、スペインやドイツ、イングランドなど強豪国から指導者を多く呼び寄せています。そして我々日本人もここにいる。各環境でそれぞれの育成強化のノウハウが植え付けられると、選手育成は確実に拍車がかかります。

 今、中国代表のウー・レイという有能なアタッカーがスペインのエスパニョールでプレーしています。彼のような世界で戦える選手が20人出てきたら、単純に中国代表は強くなる。10年後にそれが現実となった場合、アジアの中で日本もこのままでいいのかという壁にぶつかるかもしれません。そのためにも、日本もどこかでアップグレードは必要になってくるでしょう。

 中国は南の地方の人間は上背はないですが、動きが本当に機敏で細かい。北京などの北の地方は体格に優れている。そういう素材の選手たちをサッカーの育成の原理原則に沿って指導していくことができれば、純粋な実力主義で育成を進めていけば、中国サッカーは大成すると思います」

 秘めたる力を持つ、中国。その目覚めはいつかと言われすでに久しいが、覚醒したときの爆発力は計り知れない。それを喜熨斗は、日本人のサッカー観と方法論で指導しながら、彼の国で実感している。

 そしてそこでの経験を、いずれは当然母国に還元したい。

「もちろん日本でも指導をしたい。今できている稀有な経験を、しっかり生かせる時は来ると思っています」

 54歳が実年齢には見えないほど、見た目も中身も若さと意欲にみなぎる。喜熨斗の指導者としての道は、まだ続く。
 

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