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CL決勝、マンU奇跡の逆転から20年。
凝縮されていたサッカーの教訓。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2019/05/27 10:30
シュマイケルが、ファーガソン監督が喜びをあらわにする。サッカー史に残る劇的な展開で赤い悪魔がビッグイヤーを戴冠したのだ。
サッカーの教訓が凝縮されていた。
古い取材ノートを開いてみる。その瞬間は、こうとだけ記されていた。
「またCK──────── 2-1!!」
すべての予断が、木っ端みじんに吹き飛ばされた、まさに奇跡のファイナルだった。けれどそこには、サッカーというスポーツのセオリー、教訓が凝縮されてもいただろう。
「決めるべき時に決めなければ勝利は逃げていく」
「ひとつの選手交代で試合の流れは大きく変わる」
「タイムアップの瞬間まで勝負は何が起こるか分からない」
「奇跡」という言葉だけでは決して語り尽くせない、チャンピオンズリーグ史上に残る伝説の逆転劇──。
試合後、地獄の淵から一気に天国へと駆け上った赤い悪魔が、カンプノウを貸し切って盛大なパーティーを開いていた。勝利の余韻がいつまでも、ユナイテッド・サポーターが陣取る一角を残してスタンドがすっかり空になっても延々と続いたのは、絶望から歓喜までのインターバルがあまりにも短かったせいだろう。
シュマイケルが、コールが、ベッカムが代わる代わるビッグイヤーを誇らしげに夜空に突き上げ、サポーターがそれに地鳴りのような雄叫びで応える。
いつ終わるとも知れないパーティーを煽るように、フレディがまた歌っている。
『We Are the Champions』が、擦り切れるほどリフレインされていた。