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全米プロ連覇で完全優勝のケプカ。
人生が詰まった「心の逆転優勝」。 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

PROFILE

photograph byAP/AFLO

posted2019/05/21 10:30

全米プロ連覇で完全優勝のケプカ。人生が詰まった「心の逆転優勝」。<Number Web> photograph by AP/AFLO

全米プロ連覇を達成したブルックス・ケプカ。4日間首位を守り続けた完全優勝だったが、決して平坦な道のりではなかった。

昨年、脳裏に過ぎった「引退」。

 チャンスとピンチ、ピンチとチャンスが交互に訪れることも、ケプカは身をもって知っていた。

 2017年の全米オープンを制し、夢にまで見たメジャー初優勝を挙げたケプカだが、その喜びは、半年後には落胆へ、絶望へと様変わりした。

 2018年1月に左手首を傷め、以後、4カ月近くも戦線離脱を余儀なくされた。

「左手では軽いものを持つことすらできなかった」

「もう2度と試合で戦えなくなるのではないかと思うほどの痛みだった」

 昨年のマスターズ出場にドクター・ストップがかかったとき、ケプカの脳裏には引退の2文字がよぎったそうだ。マスターズが始まると、ライバルたちがオーガスタで戦う姿を「テレビで観る気には到底なれなかった」。

怪我を乗り越え、通算メジャー3勝。

 その悔しさがケプカの戦意を燃え上がらせると同時に、焦る気持ちを抑える我慢と忍耐、逸る心を制御するメンタルコントロールも自然に身に付けていった。

 なかなか治らない左手首を治したい一心で、ついには馬のカイロプラクターを訪ね、処置してもらったことは、以前、この場でご紹介した通りだ。

 処置のおかげで左手首が治り、4月末に戦線復帰。

 6月に全米オープン連覇を果たしたことで、「左手首の故障による窮地を乗り越えた」という強い自信を得たケプカは、その2カ月後、全米プロ初制覇も果たし、瞬く間にメジャー3勝の強者になった。

【次ページ】 躓いても、転んでも、走り続ける。

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