ゴルフPRESSBACK NUMBER
全米プロ連覇で完全優勝のケプカ。
人生が詰まった「心の逆転優勝」。
posted2019/05/21 10:30
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
AP/AFLO
全米プロ連覇を果たし、メジャー4勝目を挙げたブルックス・ケプカの勝ち方を、どう見るか――。
初日にべスページ・ブラックのコースレコード「63」をマークして単独首位に立ち、4日間、首位の座を守り通した彼の戦い方は、見事だったと言っていい。
さらに2日目は、5つスコアを伸ばし、2位との差を7打差へ広げた。
だが、ケプカ自身は不満を露わにして練習場へ直行するほど、ショットは乱れ始めていた。
3日目は彼のゴルフの要だったはずのパットが乱れ始め、スコアを伸ばすことはできなかった。
それでも2位に7打差の単独首位で迎えた最終日。スタートホールでいきなり第1打を左ラフに入れてボギー発進。4番と10番でバーディーを奪ったものの、11番からは4連続ボギーを喫し、追撃をかけていたダスティン・ジョンソンとの差は、ついには1打まで縮まった。
それほど苦戦を強いられたケプカが、それでも最終的に勝利できたのは、なぜだったのか。
“ジョンソンのおかげ”ではない。
じりじりとケプカに詰め寄ったジョンソンが、16番と17番で連続ボギーを叩き、自滅する格好で後退していったことが、ケプカの終盤の戦いを楽にしたことは間違いない。
だが、だからと言ってジョンソンのおかげでケプカが勝ったわけでは、もちろんない。もっと言えば、最終日のジョンソンが掴みかけたチャンスを自ら逃した一方で、ケプカは逃しかけた勝利を絶対に逃すものかとしがみつき、ピンチを切り抜けて優勝に輝いた。
スコアの上では、4日間、首位を守り通した完全優勝。だが、その内容を吟味すれば、ケプカの最終日のゴルフは、ある意味、悪くなった流れを心の強さで反転させて勝利した、いわば「心の逆転優勝」だったと私は思う。