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ナダルが今季クレーで優勝ゼロ。
33歳にして正念場を乗り越えるか。
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byGetty Images
posted2019/05/16 17:00
11度の全仏オープン制覇は燦然と輝く金字塔である。ナダルは今季も赤土の王者として君臨できるか。
苦しんでいた2015年の大復活劇。
けがの影響を引きずるようにして、期待通りに活躍できない今季のような姿を見たことがある。
右手首痛から復帰した2015年シーズン。私が初めて四大大会を取材したその年も、ナダルは苦しんでいた。6連覇が懸かった全仏オープンは準々決勝で第1シードのジョコビッチと早々とぶつかり、ストレート負け。全仏では6年ぶり2度目の黒星というデータが、赤土最高峰の舞台で築き上げてきたナダルの圧倒的な存在感を物語っていた。
続くウィンブルドンでは、2回戦でドレッド頭のダスティン・ブラウン(私が好きな選手!)のトリッキーなプレーに屈した。私は「落日」という言葉を使い、輝きを取り戻せないナダルの当時の状況を記事にした。
しかし太陽は、再び昇ってくれた。ナダルは四大大会で1度も8強入りできなかった2016年を乗り越え、翌年は全仏で3年ぶり10度目の優勝。8月には約3年ぶりに世界1位に返り咲き、全米では4年ぶりのタイトルを手にした。2018年は全仏で連覇。得意ではない芝のウィンブルドンでも7年ぶりに4強入りしたのだった。
もっとも、その勢いは長く続かなかった。連覇を狙った全米で右膝を痛めてしまう。準決勝のフアンマルティン・デルポトロ(アルゼンチン)戦で、無念の途中棄権。コートを縦横無尽に駆け回るフットワークに、体が付いて来られなくなってきたのか。そんな印象を受けざるを得なかった。
今年、再び訪れた正念場。全仏オープン第2週の月曜日にあたる6月3日、ナダルは33歳の誕生日を迎える。「落日」と同じような表現は、当分使いたくない。