テニスPRESSBACK NUMBER
ナダルが今季クレーで優勝ゼロ。
33歳にして正念場を乗り越えるか。
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byGetty Images
posted2019/05/16 17:00
11度の全仏オープン制覇は燦然と輝く金字塔である。ナダルは今季も赤土の王者として君臨できるか。
前向きな姿勢にも欠ける安定感。
最近は記者会見のたび、不調を前提とした質問が飛び交う。モンテカルロでは弱気な言葉も出たが、本人は基本的には前向きな姿勢を貫いている。
マドリードの開幕前は、「自分にとってのトップレベルになるためにベストを尽くしているし、そこに近づいていると思う」と言った。
そのマドリードでは、3回戦で錦織圭に6-3、7-6で快勝したスタン・ワウリンカ(スイス)と準々決勝で対戦し、3ゲームしか与えず完勝を飾った。
「彼は非常にタフな錦織を破ってきたし、厳しい戦いになると思っていた。僕にとって、いい日になった。全てがうまくいった。相手はバック側を狙いに来ていたが、僕のバックのリターンが良かったので隙を見つけられなかったと思う」
試合を支配し、自信を取り戻したかに思えた。だが、翌日の準決勝でチチパスに敗れると、「やりたいことができなかった」。トーナメントを勝ち上がるために必要な安定感が、欠けていた。
「感覚はいいんだ、感覚はね」
コメントの中に達観したような要素をにじませることが多いナダルは、この時も自分の置かれた立場を冷静に見つめ、言葉をつないだ。
「僕はこのサーフェスで長年、多くの勝利を重ねてきた。今年は(十分に)勝つことができない。それは受け入れるけど、何かを変える必要があるということではない。(ティームにストレート勝ちした)2017年のバルセロナ・オープン決勝や(決勝でフェデラーと激闘を演じた)全豪のようなプレーができていたら、負けてはいなかったと思う。あくまでも感覚として、だけど。フォアで十分にダメージを与えることができなかった。僕のフォアを嫌がらない時、相手はより快適にプレーしてくる」
2日後、イタリア国際の舞台となるローマの記者会見場に現れたナダルは、再び「今季は未勝利だが」という趣旨の質問を受けた。
「感覚はいいんだ。まだ優勝していないけど、感覚はね。勝つために十分なプレーをしていないけど、とても悪いわけではない。3大会連続で4強入りしているし。いや、インディアンウェルズから4大会か。けれど、それがテニス。勝つこともあれば、負けることもある」