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「あの時の齋藤学」を遠く離れて。
左からドリブル、だけじゃない姿を。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byGetty Images
posted2019/05/17 07:00
左サイドからのカットインだけでなく、右サイドでは連動して崩す。齋藤学はフロンターレで今までとは違う輝きを見せている。
神戸相手に追加点をお膳立て。
チーム事情を考えれば、無難なパフォーマンスで終わっても及第点をもらえたはずである。
だが齋藤はこのチャンスを逃さなかった。
開始早々、右サイドから中央でボールを引き出して、スルーパスを配球。その後も鋭いカウンターから追加点をお膳立てするなど、不慣れな右サイドから攻撃にアクセントをもたらす役割として躍動した。苦しい台所事情を勝利で乗り切った試合後、安堵の表情でこう振り返っている。
「前半はちょっと最初、神戸に(ボールを)持たれていた。あそこで自分たちのペースに持ってくるのに、どうしようかなと。そこでわざと自分が間に入って、ドリブルを何回かした。自分が中に入って、カズ(馬渡)にヒールで出したり、そこで相手を押し込めたのは、右サイドでやれたこと。もちろん急造だし、カズと組んでいる回数も少ない。でも後半は落ち着いてやれたし、悪くなかったと思う」
そして「右でもあれぐらいはできないとね」と笑っていたが、彼の誇る豊潤なキャリアがなせる対応力を示したゲームとも言えただろう。
何より、この試合をきっかけに「右の齋藤学」として存在感を一気に高めている。
右と左で変わるプレースタイル。
続く第10節のベガルタ仙台戦では、鋭い出足によるパスカットから脇坂にボールを預けて2点目をお膳立て。
その4日後に行われたACL・上海上港戦では、右サイドから中央に流れて、鮮やかなワンツーからレアンドロ・ダミアンが決めた同点弾のアシストを記録。右サイドで中央に顔を出してパスワークを循環させ、ドリブルも織り交ぜてフィニッシュワークを作り出す。
それでいて、試合終盤に左サイドに配置転換されれば、間延びしたスペースをドリブルで切り裂いた。
右サイドでゲームのリズムを生み出し、終盤には左サイドでジョーカーにもなる。今年のチームの中で生きる「新しい齋藤学」を確立しつつあった。