野球クロスロードBACK NUMBER
「費やした時間が1番多かった」
平石監督が期待するオコエの器。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2019/05/18 10:00
春のキャンプでオコエ瑠偉を指導する平石洋介監督。昨年シーズンオフ、監督代行から正式な監督に昇格した。
奔放な一方、重圧も……。
オコエといえば、これまでその言動が面白おかしく切り取られてきた。
1年目の春季キャンプには後頭部をV字に刈り上げた、自称「俺流ヘア」でスポーツ紙の一面を飾る。地方遠征でご当地ものを食べただけでも、外国人選手の打撃フォームを何気なく真似しただけでも、スポーツ新聞のネタの対象とされてきた。
オコエ本人のサービス精神旺盛な性格も相まって、メディアにとってはありがたい存在なわけだが、結果が伴わなければそれらは当然、批判となって跳ね返ってきたこともあった。
奔放な振る舞い。その一方で、オコエは心に重荷を背負い続けてきた。
「『外れ』ではあるんですけど、ドラフト1位で入ったわけじゃないですか。だから、プレッシャーを感じながらやってはいましたね。『結果を残せないでやっていけんのか?』って想いはずっとあったんで」
20歳そこそこ。ドラフト1位の重圧がちょっとしたストレスとなり、言動に隙が生じる。プロとしてそこを見逃さなかったのが、2017年まで二軍監督を務めた平石である。
「なんで俺だけに言うんだよ!」
現一軍の指揮官は、「まあ、ネタが多い男なんで」と苦笑いを浮かべつつ、オコエとの格闘のページをめくる。
「一昨年までは、あいつに費やした時間が一番多かったくらいでね。とにかく、よくいろんな話をしましたね」
オコエからすれば、当時は「なぜ怒られているのか?」すら理解できなかったという。
平石から罵声を浴びせられる。
「なんで俺だけに言うんだよ!」
心の中で舌打ちし、鬱憤を溜めこむ。そんな瞬間もあったとオコエは言う。ただ、二軍にいる時やシーズン終了後の教育リーグでは、多い日で2時間も打撃投手をしてくれるなど、自分の成長のために助力してくれる平石に、感謝の念を抱いていたのも事実だった。
叱責を受ける。少し腐る。その繰り返しの過程で、オコエは未熟なりに、平石の「法則」に気づき始めていた。
技術的な側面に関しては、ほとんど指摘されなかったのだという。