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「ダビスタ」開発者が語るブーム。
最強配合と世界を自由に楽しむこと。
text by
軍土門隼夫Hayao Gundomon
photograph byParityBit
posted2019/05/17 08:00
ダービースタリオンと聞いて自分が育てた一番強い馬の話を始める人があなたの周りにもいませんか?
「最強配合」で一色になるのは面白くない。
だから例えば、薗部だけが知っている最強馬の配合はあるのかという質問をしたとしても、こんな答えが返ってくることは訊くまでもなくわかっている。
「ないない、ないですよ(笑)。どうすれば最強馬ができるかなんて、そんなの自分でもわからないですよ」
薗部がやっているのは、本当に、箱庭世界を提供すること、それだけなのだ。あとはその中で自由に遊んでください。攻略するのも、それを記事にまとめるのも好きにやってください。そういうことだった。
だからそれは、現実に、もっというと人生そのものによく似ている。
「雑誌やネットで、こういう配合をすると強い馬が出やすい、という情報が出るでしょう。それはいいんです。こちらが思いもよらない攻略ルートが開拓されるのは見ていても面白いんです。
でもそういうのが出ると、みんながその意見を信じて、それしかやらなくなるところがあるでしょう。そういうのはどうかなと思うことはあります」
作りたかったのは、やりくりのゲーム。
そんな話をしていると、横で聞いていた編集者がこんなことを呟いた。ダビスタって「最強馬」作りもいいけど、最初に重賞を勝てるかどうかくらいの頃がいちばん楽しいですよね。それを聞くと、薗部は嬉しそうな顔になった。
「そうなんですよ。最初のGIを勝つくらいとかね。お金がないのをやりくりして、どれを種付けしようとか悩んだりして。現実の競馬は1勝するのがすごくたいへんで、勝つとすごく嬉しいでしょう。僕が作りたかったのは、そういうゲームなんです」
お金といえば、ダビスタの中では種付料や賞金はすべて「円」だ。ゲームではよく「ゴールド」や「ギル」のような、その世界だけの通貨が設定されるが、そういうことはしていない。