ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
不屈のトッテナムに神を見た逆転劇。
美しく散ったアヤックスにも喝采を。
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byAFLO
posted2019/05/09 18:00
CL史に残る90+6分での逆転ゴール。トッテナムとアヤックス、対照的な感情が浮き彫りになった。
同じ陣容はCLで見られないだろう。
今季のCLで台風の目になったのは、そんなチームだった。もちろん劇的な大逆転勝利を飾ったリバプールやトッテナムの諦めない気持ちにも心を打たれたが、同時にアヤックスがここまで見せてきた快進撃もまた、心に響くものがあった。
予算規模の面では決してビッグクラブに並び立てないアヤックスが、若い選手たちと固い信念を携えて、誰もが予想しえなかった頂点まであと一歩まで迫ったのだから。
チームの核だったフレンキー・デヨングは来季からバルセロナへ行くことが決まっている。キャプテンのマタイス・デリフトも、中盤で汗をかいたドニー・ファンデベークも、華麗なスキルを見せたツィエクやダビド・ネレスも、早ければ来季にはより大きなクラブへと引き抜かれていくだろう。
テンハーフ監督もまた、近い将来に別のリーグからお呼びがかかり、名監督への道を歩むことになるはずだ。もう同じチームをチャンピオンズリーグの舞台で見ることはできない。それをわかっているからこそ、惜しむように、スタジアムのファンは喝采をやめなかった。
きっと“2019年のアヤックス組”がこれから各地で活躍するところを見るたびに、我々は今季のアヤックスを思い出すことになるはずだ。