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女子柔道78kg超級の争いが熾烈。
素根輝、2020年で「笑うのは自分」。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2019/05/01 08:00

女子柔道78kg超級の争いが熾烈。素根輝、2020年で「笑うのは自分」。<Number Web> photograph by Getty Images

素根は4月上旬に行われた全日本選抜柔道体重別選手権大会で、3連覇を達成した。

ライバル朝比奈との30%の差。

 だが、華やかな経歴の一方で、忘れられない悔しさがある。

 それは昨年、世界選手権78kg超級の代表に選ばれなかったことだ。理由は、世界で金メダルを獲得できる可能性という点で劣ると見られたことにあった。

 同じ階級には朝比奈沙羅という22歳の若き実力者がいる。グランドスラムでの優勝経験もある朝比奈は、国際大会で実績を積み重ねていた。そして選考理由について、全日本柔道連盟の金野潤強化委員長はこう語っている。

「選考基準は、世界で金メダルを獲得できる可能性が高い選手。朝比奈は国際大会で3連勝しており、外国人に対して強く、国際大会でのポイント獲得率が94.63%。素根は67.50%で、約30%の差があります」

 結果、朝比奈が78kg超級の代表となり、素根は団体戦の代表で選ばれるにとどまった。

 それでも腐らずに励み、アジア大会で金メダル。世界選手権では、朝比奈が金メダルを獲得する姿を見つめ、「来年は自分が出て優勝するという気持ちです」と語るほど、悔しさを募らせた。

延長戦で発揮した持久力と執念。

 こうして迎えた今年。全日本女子選手権決勝は、その執念が明瞭に伝わる試合となった。

 対戦相手は朝比奈。先に指導2つをとられてしまい、あと1つとられれば反則負けとなる状況に追い込まれた。それでも下がることなく前へ出る。背負い投げなどを見せながら、気迫をみなぎらせた。

 延長戦に入ると、持ち味とする豊富なスタミナとともに、素根の執念が勝った。積極的に技を仕掛け続け、一方の朝比奈は息が上がる。

「絶対に勝ってやろう、そういう気持ちだけでした」

 最後は朝比奈に3つ目の指導。素根が優勝を手にし、念願としてきた世界選手権への出場を決めた。

【次ページ】 「同等」の2人、五輪の座は?

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