松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
ゴールボールの天摩由貴が、ロンドン
パラに出場後、陸上競技をやめた理由。
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byYuki Suenaga
posted2019/05/06 08:00
ディフェンス時、顔に当たらないよう天摩さんの左腕は顔の前に。でも修造さんの顔は無防備。ボールは硬い。当たったら、痛い!
聞くことに関して長けているかも。
松岡 それが普通のことだからか。ただ、由貴さんの抱くイメージって僕たちのイメージよりも数百倍優れているような気がするんです。だって幼いころからたえず耳で情報を読み取ってきたわけだから。
天摩 慣れもありますし、もともと聞くことに関しては視覚障害者の方が少し長けているのかもしれません。でも、たとえば松岡さんたち晴眼者が同じくらいトレーニングをして、同じくらい聞けるようになったら、そのイメージは私たちを超えると思います。というのは、すでに備わっている視覚情報に耳で読み取ったイメージをプラスすることができるので。あくまで私の想像で、実際はわかりませんけど。
誰でも楽しめるゴールボールの魅力。
松岡 そういう考え方もできるのか。よく僕は車椅子テニスの国枝(慎吾)さんと話をするんだけど、車椅子テニスに健常者と障害者を分ける必要はないんじゃないかって。ただ車椅子に乗ったテニスで、彼は僕たちには到底できないすごいテニスをしているんです。ゴールボールにも似たような魅力があるように思うんですね。アイシェードで見えない状態を作るわけだから、健常者が参加しても条件は同じだと思うんですけど。
天摩 たしかにそれはゴールボールの魅力の1つで、障害の有無に関係なく、誰でも同じように楽しむことができます。実際に健常者だけのチームを作って大会に参加した例もありますし、一緒にチームを組んでいるケースもあるくらいですから。
松岡 じゃあ、ゴールボールはオリンピックの競技でも良いという捉え方もできますね。
天摩 そういう意味では。でも、目隠しをして、わざわざこの痛いボールを受けたいと思いますか(笑)。
松岡 思わないです!
天摩 だから、この競技が五輪に取り入れられることはないんじゃないかと。
松岡 そういうことか(笑)。今の答えを聞いても、相当痛いんだろうなということが伝わってきました。
天摩 さっき投げたボールの比ではないですから。私たちは練習で男子選手の投げたボールを受けたりもしますけど、加減して投げてもらってもかなり痛いので。男子の試合は格闘技に近いです。