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ダルビッシュが取り戻した遊び心。
職人系より、ゲーマー系でいこう。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2019/04/23 10:30
303日ぶりの勝利が話題となったダルビッシュだが、今はマウンドに立つこと自体が楽しくて仕方なさそうだ。
とりあえずキレ気味でマウンドへ。
思い当たるフシはある。
右腕を傷めた昨年5月以来の勝利を挙げた15日のマーリンズ戦の最後、なぜか怒っていて、いい球がいった。速球が2016年以来の時速98.7マイル(約159キロ)を計時したのも、その時だ。
そうかな? と思い、ダルビッシュは5回のマウンドに上がった。
何に怒りを燃やせば良いのか、よく分からないまま、とりあえずキレ気味に。
0-3で迎えた5回表は上位打線との対決だった。先頭打者は初回に先制本塁打を許したエドゥアルド・エスコバーで、スライダーで左飛に打ち取った。
次打者の3番デイビッド・ペラルタにも初回、右越え本塁打を打たれていたが、スライダー2球で2ストライクと追い込む。
試合前のミーティングでは「ペラルタは速球にめっぽう強い。投げるのはスライダーだけでもいい」と話し合った。事実、そこまでの2打席+2球の7球はすべてスライダーである。
「今の僕はマウンドで冷静すぎ」
ところが3球目。「キレ気味」のダルビッシュは、こう考えた。
「真っ直ぐでチャレンジしたる。絶対、三振奪ったる」
3球目こそボールになったが、4球目は外角低めに伸びのある速球が決まった。
時速95.8マイル(約154キロ)。見逃し三振である。
続くアダム・ジョーンズをスライダーで空振り三振に仕留め、5回を3失点で切り抜けた。
この日3四球を出してナ・リーグでワーストとなる18四球に達したものの、7三振を奪った。
その裏の攻撃で打順が回ってきたため、ダルビッシュは代打を送られて降板し、チームがそのまま敗れたために今季3敗目を喫した。
試合後の会見で本人が明かしたのが、リゾのアドバイスの件だった。
「多分ですけど、今の僕はマウンドで冷静すぎる……いろんなことに。普段の僕があそこにいるって感じなんです。普通はもうひとりの自分がいて、“こいつどうやって三振奪ったろかな”とかそんなことばっかり考えていたのが、“フォームがどうかなとか、大丈夫かなとか”を先に考えちゃってる」