プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ユベントスへ旅立つ“ランボー”。
復活&EL制覇の劇的結末はあるか。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto Press
posted2019/04/21 08:00
EL準々決勝第2戦ナポリ戦で負傷退場したラムジー。アーセナルは決勝まで駒を進め、「ランボー」のフィナーレを演出できるか。
「最後まで全力を尽くす」
アーセナルの今季のリーグ順位は、4月1日のニューカッスル戦(2-0)後の3位が最高。ラムジーは、その一戦でもマン・オブ・ザ・マッチ級の働きを見せた。味方のファウルで無効とされていなければ、前半早々にCKから先制のボレーを記録しているはずだった。
それでも、実際の先制ゴールは30分。ボランチのマテオ・ゲンドゥージからのパスを右足アウトサイドで前方のFWアレクサンドル・ラカゼットに叩き、自らボックス内に顔を出すと、足下に転がってきたルースボールを左足で捉え、ファーポスト内側にダイレクトシュートを決めてみせた。
こうしたパフォーマンスは、ユベントスと4年契約を結んだ際の声明文に明記された「アーセナルのために最後まで全力を尽くす」という言葉通り。もっとも、17歳のときにカーディフ(当時2部)から引き抜かれた逸材で、生え抜きに近いラムジーにとっては当然のプレーと言えるかもしれないが、誰にでもできる芸当ではない。
見直されたラムジーの評価。
エメリ体制下でのラムジーは、メスト・エジルとポジションを競うトップ下での起用が多く、第2節にはベンチスタートを経験している。その後、昨夏に提示された新契約条件を素直に飲まなかった影響もあり、レギュラーとは言えない状況が続いた。
そうした境遇に置かれれば、心が新天地での来季に傾いても不思議ではない。しかし、ラムジーは渾身のプレーを続けた。結果、週給にして20万ポンド(3千万円弱)の新契約を取り下げ、フリーエージェントとしての移籍を許したクラブは「大きな過ちを犯した」と言われている。
厳密に言えば、それだけラムジーが見直されたということになる。クラブが契約延長に固執しなかった背景には、ラムジーに用意された新年俸相当額を、より将来性のある戦力の補強に当てることを望む新監督の考えがあったとされる。攻撃の中枢として生かすべき既存戦力は、チームの最高給取りでもあるエジル。そう判断した首脳陣に対し、当初は「妥当」との声が多かった。