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競泳界のホープが日本選手権初V。
渡辺一平「世界記録更新」へ着々。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2019/04/14 10:00
世界選手権の個人種目で優勝すれば東京五輪代表にも内定する。渡辺は「成し遂げなければならない」と語った。
自身との戦いに集中した日本選手権。
優勝できなかったこれら国内外の大会では、同じくリオ五輪代表だった小関也朱篤が常に上位にいた。だから、小関に勝ちたいという思いは強かった。実際、「小関さんには勝てていません」「負けないように頑張りたいです」と、言葉にもしてきた。
しかし、今大会では心持ちに変化があった。200mのレースを振り返る中で、渡辺は言った。
「(レース中)ぜんぜん、まわりは見ていないです。ここ最近は、自分自身との勝負というか、自分がどのようにして速く泳ぐかを心がけて、レースに臨んでいます。まわりはぜんぜん見ていないです」
課題の1つとしてきた体調管理がうまくいったこと、大会へ向けての海外での高地合宿など練習がよくできていたこともあるだろう。要因はいずれであるにしても、自分の泳ぎをすることに徹したのである。
渡辺は、ライバルが誰であれ、「50mから150mを速く泳ぐ」という課題と想定したタイムをクリアすることを心がけた。それが導いた、好タイムでの優勝だった。
チャレンジャーから追われる立場。
思えば、世界記録を達成した当時は、「若手だし、思い切った泳ぎができる」ことをその理由にあげていた。だが、いつしか「チャレンジャーとして頑張っていたけれど、追われるというか、立場が変わった気がします」と言うように、注目の度合いもあいまって、立ち位置の違いを感じ、それが自らの意識にもどこか影響していたのではなかったか。
そうした反省も生かしての思い切りのいいレースは、世界記録更新が間近だと感じさせる泳ぎだった。日本代表の平井伯昌ヘッドコーチも高く評価する。
「今回は渡辺一平選手が世界記録へのチャレンジをしてくれたというのがチームとしては心強いところ。金メダル、世界記録を目指していくチームであることを忘れないで夏の世界水泳に臨んでいきたいと考えています」