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柏に3失点も「スッキリした敗戦」。
手倉森監督は長崎をどう進化させる?
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/04/06 10:30
長崎は開幕7試合で2勝1分け4敗の20位というスタートとなった。しかし手倉森監督なら逆襲の算段を整えているはずだ。
柏戦はスッキリした敗戦だった?
勝点が積みあがっていかない主要因は、得点の少なさにある。勝った2試合でしか、ゴールをあげていないのだ。7試合で2得点はリーグワーストである。第6節までリーグ最少3位タイだった失点も、柏戦の被弾で8位タイまで後退してしまった。
浮上のきっかけを数字から読み取るのは、率直に言って難しい状況だ。ならばなぜ、手倉森監督は柏戦をスッキリとした敗戦と振り返るのか。
柏の攻撃陣はJ1規格だ。日本での実績が豊富なブラジル人アタッカーのクリスティアーノ、193センチのサイズを誇るケニア代表FWオルンガが、最前線で相手守備陣に猛烈な圧力をかける。今シーズンから加入したガブリエルはスピード豊かなサイドアタッカーで、ヒシャルジソンは優れたボール奪取力と前線への効果的な飛び出しが特徴のボランチだ。
日本人選手もタレントが揃っている。日本代表GK中村航輔がいて、昨シーズンのJ1でともに9得点の瀬川祐輔と江坂任がいる。34歳のキャプテン大谷秀和も健在だ。チームを束ねるネルシーニョ監督は、J1とJ2で200勝以上を記録している名伯楽である。いますぐJ1に混じっても、それなりに戦えるだけの戦力と言っていい。
個性を出しつつ足りない部分を補う。
長崎はどうか。
ベガルタ仙台で手倉森監督に師事した35歳のベテラン角田誠、リオ五輪代表で指揮官のサッカーに触れた亀川諒史、J1優勝もJ1昇格も知る元日本代表FW玉田圭司らが新加入した。韓国代表経験のあるFWイ・ジョンホも獲得した。昨シーズンから在籍する選手には、J1で実績を残してきたDF徳永悠平やMF磯村亮太もいる。
タレント不足ではない。しかし、いますぐJ1で戦ったら苦戦は免れそうもない。個の力ではなく2人や3人の連係を生かして局面で優位に立ち、11人が互いの個性を引き立たせながら足りない部分を補っていくのが、長崎の方向性にはふさわしい。
だからこそ、手倉森監督は柏戦にポジティブな要素を見出すのだ。