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ファイナルで見せた粘りの卓球。
“危機感”が早田ひなを強くした。
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byAFLO
posted2019/03/31 11:00
Tリーグ初代王者となった日本生命レッドエルフ。ここ一番、早田の粘りで優勝を引き寄せた。
再び、袁雪嬌との戦いに。
しかし、この日はこれで終わりではなかった。
第4マッチは木下アビエル神奈川に奪われ、勝負の行方は2-2となった場合に行われる1ゲーム制の延長戦へと突入。ここで再び登場したのは早田だった。しかも、相手は、奇しくも第3マッチで対戦した袁だった。
「何も考えずに、本当にゼロの状態で入れました。全然緊張もしなかったですし、すごく冷静に、でも強気に試合をすることができました」
終始強気のプレーを見せた早田がビクトリーマッチを11-7で制し、ゲームカウント3-2で日本生命が勝利。勝利が決った瞬間、早田は顔を手で覆い、歓喜の涙を浮かべた。
ジャパントップ12での大逆転負け。
プレイオフファイナルでは無双とも呼ばれる強さを見せつけた早田だが、実は約2週間前に経験したある出来事が、精神的にひと回り大きく成長させていた。
3月2日に行われた、世界卓球選手権日本代表選考会を兼ねたジャパントップ12準決勝。3-3で迎えた最終第7ゲームで、早田は10-5とマッチポイントを握りながらも、加藤美優に5連続得点で10-10に追いつかれ、最後は11-13で大逆転負けを喫した。
日本生命の指揮を執る村上恭和氏も「生涯に一度あるかないかという逆転負け。だいぶ落ち込んでいた」と振り返ったように、選考会からファイナルへと気持ちを切り替えるのは容易なことではなかった。
「どうしても調子が良かったときの自分と比べてしまったり、“ここができていないんじゃないか”と不安になってしまって」
それでも、そこに立ち止まったままではいられない。
「過去の自分や未来の自分と比べても仕方がないですし、今、自分ができること、どうすれば勝てるかということだけを考えました」
Tリーグプレイオフ、袁との第3マッチの第4ゲームでお互いに一歩も譲らない展開になったとき、さらにビクトリーマッチで10-6とリードしたときも、ジャパントップ12での反省がしっかりと活かされていた。