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羽生結弦とネイサン・チェンの美。
世界選手権で語り継がれる名勝負。
posted2019/03/24 12:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
記憶に残る勝負だった。
ソチ、平昌五輪金メダルをはじめ、いわずと知れた第一人者である羽生結弦、昨年の世界選手権金メダルのネイサン・チェン。3月23日、世界フィギュアスケート選手権男子フリーの場で両雄の見せた演技は、ひとこと、そう表すにふさわしかった。
ショートプログラムではチェンが107.40の高得点で首位に立ち、羽生はジャンプのミスがあって94.87点で3位。迎えたフリーは羽生の巻き返しなるかが焦点の1つだった。
そして羽生はその期待に応えた。
ルール変更後の世界最高点。
冒頭は4回転ループ。
公式練習ではなかなか決まらず、何度も何度も跳んで調整していたジャンプを鮮やかに決めると、大きな歓声が沸く。
続く4回転サルコウは着氷で乱れたが転倒してもおかしくない状態でも踏ん張り倒れない。
後半には4回転トウループ、そして今シーズンから挑んできた4回転トウループ-トリプルアクセルも成功。サルコウでの減点を除けば、あとは完璧に決めた。
曲が終わった瞬間、場内はスタンディングオベーションで羽生を称えた。
得点は206.10。ショートとあわせて300.97、いずれもルール変更後の世界最高点を塗り替えるハイスコアであった。
羽生の渾身の演技に対する熱狂がなかなか冷めることがない中、チェンはリンクに登場した。