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羽生結弦とネイサン・チェンの美。
世界選手権で語り継がれる名勝負。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto

posted2019/03/24 12:00

羽生結弦とネイサン・チェンの美。世界選手権で語り継がれる名勝負。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

表彰式での羽生結弦とネイサン・チェン。見る人の心を鷲掴みにする名演技だった。

チェンも非の打ち所のない演技。

 ひるんでもおかしくない熱気の中、しかし、チェンは圧巻の演技を見せる。

 冒頭、4回転ルッツを冷静に、完璧に成功させ、GOEでも4.76点の大きな加点を得る。続く4回転フリップ、4回転トウループでも加点を得ていく。

 以前は苦手としていたトリプルアクセル、4回転トウループ-トリプルトウループも成功し、4本の4回転ジャンプをすべて決めるなどした演技への得点は216・02点、合計323・42点。非の打ち所のない演技で、堂々、連覇を果たした。

 そこには、昨年の平昌五輪のショートプログラムでプレッシャーなどで出遅れた姿はなかった。

「悔しい」けど「楽しかった」。

 試合後、テレビの取材に、「負けは死も同然」と答えた羽生は、その後の取材でも「悔しいです」と率直に心中を表した。

 ただその一方で、「楽しかった」とも語る。

 その言葉は、2年前の四大陸選手権を想起させた。チェンが数多くの4回転ジャンプを武器に優勝し、羽生は2位で終えた大会だが、フリーを終えたあとに「楽しかったです」と口にしたのである。

 悔しくも楽しい。それを成り立たせるのは、自分が認める相手に敗れ、でも自身の滑りが出せた実感があるからだ。

 もちろん、フリーが100%、完璧だったとは言わない。それもあって、チェンとは得点で差が出た。

 ただ、怪我など今シーズンの推移を含めて置かれた状況の中、この日見せた滑りは、羽生だからこそできた演技だった。

 4回転ループに苦しんでいたにもかかわらず、公式練習で自らの感覚と向き合い、確かめながら調整し、きっちり試合では決めた。そして他の誰も決めたことのない連続ジャンプにもチャレンジして成功させた。

【次ページ】 来季、どんな滑りを見せるか。

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