リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
コウチーニョ、バルサ2年目の迷い。
イニエスタの後継と目された不幸。
posted2019/03/17 10:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Uniphoto Press
ホームのカンプノウに19位ラージョ・バジェカーノを迎えたリーガ第27節の80分、バルセロナが選手交代を行うと、スタンドから拍手に混じって指笛が聞こえた。
ラキティッチと代わって退場するコウチーニョに、観客が不満を示したのだ。
この日のコウチーニョは3トップの左で先発し、相手陣内でのパス廻しに絡んでいた。統計サイト『WhoScored.com』によると、ボールに触れた回数はチーム6番目の86回で、出したパス数も5位の68本。パス成功率は50本以上出した選手の中では5位の88.2%で、ロングパスに関しては蹴った4本すべてを通している。
並の選手やカンテラ上がりの若者なら、及第点はもらえるパフォーマンスだ。しかし、コウチーニョはクラブ史上最も高価な助っ人である。
昨年1月、バルサは1億2000万ユーロ(約150億円)を越える移籍金をリバプールに支払うことを約束しているため、観客が彼に向ける目は自ずと厳しくなってしまう。また、指笛は当夜の出来だけに対して吹かれたわけではない。
「悪くはないが」ばかり。
バルサの一部サポーターは、コウチーニョがなかなか活躍しないことに苛立っている。昨季の彼は、リーガ18試合1303分で8得点5アシストを記録した。
バルサの難しいサッカーに飛び込んですぐこれだけやってのけたのだから、チームへの順応を終えた今季は大いに期待されるのも当然である。
なのに、いつまで経ってもラージョ戦同様「悪くはないが」という試合ばかりで、勝利を決定的に引き寄せるプレーは滅多に見られない。
シュートを撃つタイミングがコンマ数秒早ければ、あるいは遅ければ――。
もしくは、コースがあと数cm右、あるいは左にずれていれば――。
そんなシーンが、これまで何度もあった。シュートを相手ゴール前でのパスに変えてもいい。とにかく、コウチーニョは挑んできた。けれど、なかなか結果がついてこないのだ。