イチ流に触れてBACK NUMBER
イチロー「余裕だね、かわいいね」
菊池雄星の普通じゃないお辞儀。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byKyodo News
posted2019/03/11 07:00
3月7日(日本時間8日)のオープン戦、対レッズ戦で先発したマリナーズの菊池雄星とイチロー。
「そりゃ、ちょっと面白いね」
「僕、ピッチャーのこと見ないから。どんなプレーをしたときも」
それでも一連の動きを報道陣から知らされると一気に目尻を下げた。
「それは、応えないわけにはいかない。今日のアレ(平凡な右飛)で応えるわけにはいかないけど、そりゃ、ちょっと面白いね。そんなセンスあるんだ(笑)」
かわいい後輩の思いをイチローが受け取った瞬間だった。
右翼から初めて菊池の投球を見たイチローも感嘆の言葉を並べた。言うまでもなく、ここは乾燥気候のアリゾナだ。1年目は投手だけでなく、野手でも滑るボールには悩まされる。その中で菊池が投じた確率79.5%ものストライク。45歳は27歳の投球術に感心しきりだった。
「安心感あるんじゃないの。どれでもストライクが取れそうな感じするし、ピッチャー有利のカウントに持っていくテクニックが相当高いんじゃないかな」
高い投球術、その上で自分に示した子供のような心。初共演を終えたイチローの評価は一気に上がった。
「余裕があるよね。投げる日は朝から表情が違うのは当然のことですけど、先発ピッチャーは。普段とは違う表情を今日初めて見たけど、その中でもそんなことができるのは、そりゃ、“普通じゃない”わね」
「一生の思い出になると思う」
一方の菊池は――。
「オープン戦ではあるんですけど、マリナーズに決まってから、この瞬間を楽しみにしていましたので。一生の思い出になると思います」
キャンプインから3週間ほどが過ぎたが、同じチームと言えど、野手と投手ではメニューの違いから同じフィールドで練習することは少ない。それはクラブハウスでも同じだ。時間帯が合わず、ふたりがゆっくりと話し合う機会もまだ少ない。