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イチロー「余裕だね、かわいいね」
菊池雄星の普通じゃないお辞儀。

posted2019/03/11 07:00

 
イチロー「余裕だね、かわいいね」菊池雄星の普通じゃないお辞儀。<Number Web> photograph by Kyodo News

3月7日(日本時間8日)のオープン戦、対レッズ戦で先発したマリナーズの菊池雄星とイチロー。

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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Kyodo News

 ちょっと前の話になるが、ほっこりした話にお付き合いいただきたい。

 3月2日。オープン戦での調整を終えたイチローがクラブハウスでグラブを磨きながら、ゲラゲラと笑いだした。

「え、そうなの? 余裕だね。そんなセンスあるんだ。そりゃ、かわいいね」

 この日、ロイヤルズ戦で2度目のオープン戦登板を果たした菊池雄星は最速94マイル(約151キロ)の直球とカーブ、スライダーを中心に2回までは3三振を奪う完全投球。3回は味方の拙守を含む2安打、1死球から2点を失ったが、39球を投げ31球がストライクだった。

 初体験となる乾燥が激しいアリゾナでの環境下でのストライク率79.5%は、メジャー1年目のルーキーとは思えぬ見事な投球と言えた。

 その菊池が大先輩から「余裕だね、かわいいね」のお言葉を頂戴したのは、3回無死一、二塁でギャラガーを右飛に打ち取ったときのことだった。

平凡なフライだけど、ピョコリ。

「すごく幸せだなと思いながら、(三塁へ)カバーリングに行きました」

 自身が投げた92マイル(約148キロ)の内角直球が右翼を守る憧れの大先輩のグラブに収まった。この事実が何より嬉しかった。

 すると菊池は仰天の行動へと移した。約50メートル先の背番号51に向かい、帽子のツバを左手で触り、ピョコリ。“ありがとうございます!”と、頭を下げた。

 本来ならば、好守で助けてくれた野手に対し礼を尽くす所作だが、打球はあまりにも平凡だった。到底、感謝の意を表すものではない。

 それでも菊池は頭を下げた。

 彼にとってみれば、夢にまで見た初共演となったが、残念ながらその思いは憧れの大先輩にはこの時点では届かなかった。

【次ページ】 「そりゃ、ちょっと面白いね」

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