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小平奈緒、世界新へのおまじない。
てるてる坊主を逆さに吊るす理由。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2019/03/03 11:00
表彰台に立つ小平奈緒。賞のプレゼンターであり、かつて指導を受けたマリアンヌ・ティメルから祝福を受け涙を見せる瞬間も。
標高が高い最終戦で世界新なるか。
メディア対応したのは一時帰国でホッと一息ついてもおかしくないタイミングだったが、小平は「まだ目標としている大会もあるので、気は緩んでいないし、弾ける思いもぐっと抑えています」とレースモードを持続させながら、再び日本を発った。
この後は、標高が高く、好記録を期待できる米国のソルトレークシティーでのワールドカップ最終戦(3月9、10日)に出場する。世界記録のほとんどが誕生している高速リンクでの大会に向けて、気持ちは高ぶる。
「今シーズンの最大のモチベーションになっている世界記録を実現できるか。自分から目を背けず、しっかりとチャンスをものにできるように頑張りたい」
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実は世界スプリント選手権の後、1月に左股関節を故障していたことを明かしており、「今は体の状態をベストに持って行くのが一番。(股関節痛の影響で)左右のバランスを取れず、いつもの動きをやりにくい感じがあるので、そこをフィックスさせていきたい」と言うが「(スタートからの)100mに集中できれば、あとはスピードがついてくる。スタートの集中力が世界記録につながると思う」と力強い。
そして何より、究極の滑りに挑む楽しみを感じているのが大きい。
精神面の環境作りも余念なし。
小平を指導する結城匡啓コーチは「失うものはないですから、気楽に滑らせたいですね」と、精神面の環境作りにも余念がない。そして最後に、世界記録誕生を後押しするためのおまじないとして、「てるてる坊主を逆さに吊してくださいね」と応援方法を伝授してくれた。
天気が下り坂になって気圧が下がると空気抵抗が軽減され、ごくごくわずかだが記録が伸びるからだ。
コンマ1秒に生き様を表現しようとする小平。これほどまでに繊細な世界に生きる。これがスピードスケートの頂点に挑む選手なのである。