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<WTA「BNPパリバ・オープン」展望>
大坂なおみ、連覇への険しい挑戦。 

text by

山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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posted2019/03/04 16:00

<WTA「BNPパリバ・オープン」展望>大坂なおみ、連覇への険しい挑戦。<Number Web> photograph by AFLO

バインが抜け、新コーチ決定。

 あのターニングポイントから1年。大坂にとってはディフェンディング・チャンピオンとして出場する初めての大会となる。若き女王として、ただでさえ注目される大会だ。そこへきて、ここまでのサクセスストーリーに欠かせなかったはずのサーシャ・バインをコーチから解任した騒動を巡り、注目度はますます増している。10代の頃から「有名になりたい」「注目されるのは大好き」と無邪気に話していたものだが、今回自分に向けられる視線の種類は心地好いものではなかった。

「みんなが自分を見ているような気がする。いい意味で見ているのではないことも感じる」

 全豪オープン優勝後初の試合となったドバイでの初戦敗退は「まさかの」と報じられたが、その精神状態を考えれば十分に予測できた。追われるだけの立場の恐怖と不安は、経験した者にしかわからないだろう。

「最悪だった」「悲惨だった」と表現した敗戦から2週間あまり。バインの抜けたチームには、今度はかつてビーナス・ウィリアムズのヒッティング・パートナーだったジャーメイン・ジェンキンスというアメリカ人が加わった。これをプラスの刺激として自らを立て直し、連覇への挑戦のスタートラインにつくことはできるだろうか。

セリーナにとっては因縁の場所。

 拭いきれない不安材料に思いを寄せるとき、恐らくアスリートとしてありとあらゆるプレッシャーと試練を乗り越えてきた絶対的な“女王”の存在が浮かぶ。

 セリーナ・ウィリアムズ。

 インディアンウェルズはセリーナにとって因縁の場所だ。2001年のこの大会で観客から不当な扱いを受けた事件をきっかけに、翌年から姉ビーナスとともに出場をボイコット。どんなペナルティを科されようとも、セリーナの出場拒否は2014年まで実に13年間続いた。1999年、2001年と2度優勝しているが、2015年に大会復帰してからはトロフィーに手が届いていない。出産後の復帰からちょうど1年。昨年はウィンブルドンと全米オープンで準優勝に終わったセリーナが、そろそろ何かやりそうな予感もする。

 現役選手でセリーナ以外に複数優勝の実績があるのは、マリア・シャラポワ(2006年と2013年)とビクトリア・アザレンカ(2012年と2016年)のみ。いずれも複数のグランドスラム・タイトルを持つ元女王だが、シャラポワは右肩のケガのため欠場が決まっており、現在世界ランク50位のアザレンカは出産後の復帰からまだ完全復活とはいえない状況だ。

【次ページ】 復活のクビトバ、大坂世代の台頭。

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