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錦織圭と清宮幸太郎は似ている!?
新時代アスリートの天才的コミュ力。
posted2015/10/16 13:15
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Hiromasa Mano
「ええ……。とてもいい試合でした」
その瞬間、会見場が暖かい笑いに包まれた。
10月7日、楽天ジャパンオープン2回戦でクエリーにストレート勝ちを収めた錦織圭が、会見でまず「今日の試合を振り返って」と促されたときのコメントである。
ただ、言っただけではない。会見場を見回し、頃合いを見計らったところで、少し戯けたように冒頭の言葉を発した。
その間合い、その仕草も含め、錦織の「気持ち」だったのだ。
また、9日の準々決勝、チリッチ戦では1セット目を落としたものの逆転勝ち。会見で1セット目を落とした要因を尋ねられると、困ったような表情を浮かべ、こう切り返した。
「まあ、そんなことを言われましてもねえ……。そういうこともあります」
そこも、あくまでユーモラスに。
そうした当意即妙の受け答えだけでなく、錦織は、どんな質問に対しても、自分の言葉で、相応の情報量を報道陣に提供した。
翌10日の準決勝で錦織はペールに今度は逆転負けを喫した。そんな日であっても、さすがに雄弁とまでは言わないが、錦織は会見で可能な限り冷静に、丁重に、対応しているように映った。
2週間一緒にいてほとんど話さなかった子供時代の錦織。
以前、ナンバー本誌で、錦織のルーツを辿る取材をしたことがあるのだが、証言者の記憶の中にある幼少期から十代の錦織は、いつだって無口で、大人しかった。
かつてナショナルコーチを務めていたコーチの村上武資は言った。
「2週間ぐらい一緒にいても、トータルで2分半ぐらいしか話さないこともあった。ふぁい、ふぁい、って返事をするだけで。でも今では、人間ここまで変われるかってぐらい変わりましたね。堂々としゃべって。あの、ど田舎の、ガキンチョが(笑)。すごいですよね」
最近、国内のスポーツ取材現場でよく耳にするのは、「特に意味はないです」といった味も素っ気も無いコメントである。
現場の状況、聞き方等、そう答えざるをえないこともあるのは重々承知の上だが、言葉があまりにも貧しい気がする。同じ言葉を発するのであっても、錦織のように、もうちょっとユーモアがあってもいい。
錦織同様、最近、驚かされたのは早実の怪物1年生・清宮幸太郎のコミュニケーション力だ。