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優勝を逃して泣いた日…松山英樹が3年半前に中嶋常幸に語っていた「メジャーへの夢」〈悲願のマスターズ制覇〉 

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2021/04/13 11:02

優勝を逃して泣いた日…松山英樹が3年半前に中嶋常幸に語っていた「メジャーへの夢」〈悲願のマスターズ制覇〉<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

松山英樹×中嶋常幸によるスペシャル対談が実現した

中嶋 英樹の体の追い込み方は、今までのどの選手ともタイプが違うんじゃないかな。

松山 トレーナーの飯田さんはこれまでに中嶋さんや、いろいろな選手を見てきているので、僕はその経験を聞くことができる。あの選手はどういうことをやってきたとか。でも、それをすぐに取り入れるというんじゃなくて。それに対して自分には自分なりの、ゴルフのスタイルがあるんで。

中嶋 他の競技のトレーニングに刺激を受けることもあるのかな。

松山 興味ありますね。メジャーリーグの上原(浩治)さんがボストンにいた時も見に行きましたし、野球選手にはいろいろなメディアの人がついて動画を撮ったりしているんで、それを見てすごいなあと思ったり。根本的にバットを振ること、1kg近いものを振るスピードというのは野球選手は僕らより速いので、同じようなトレーニングをしたら確かにスイングスピードは速くなると思うけど、ゴルフはそれだけじゃなく、細かい動きもしないといけないので。

中嶋 他の人のトレーニングの良いところを自分に合わせて取り入れる姿勢は、特定の技術コーチをつけないことにも通じるのかな。多くの人の意見を聞けるという。

松山 そうですね。今は技術のコーチをつけないことも、楽しんでいるし、それもいいかなと思っているんです。ただ、これがしんどくなってきて、考え疲れてしまった時には、誰かにお願いして、考えをまとめてくれるような人がいたら、いいなとは思いますね。

「『メジャーで勝ちたい』というのはありますけど……」

――2018年、自分はこうなりたいなと考えていることはありますか。

松山 あんまり、そういうこと考えないんです。ただ、みんなが言うので「メジャーで勝ちたい」というのはありますけど、本当はそこじゃなくて、どれだけ上にいるかというのが大事。どの試合も上位で戦えるような選手になっていたいなと思います。

中嶋 どうしてもメジャー優勝を期待されるけど、メジャーに調子の波を持っていくとか、あまり考えないほうがいいと思う。年間で何回も勝つ選手ならば自然とメジャーに勝つ確率も上がるだろうし、準備も違ってくる。年間に1個しか勝てない選手にメジャーで勝てと言ってもそれは無理だよね。だからメジャーに勝つ準備より、いつも勝つ準備をしておくべきだよ。それがメジャーに勝つ最良の方法だと思うから。

松山 そうですね。'17年はブリヂストン招待の最終日に、すごく納得いくプレーができたんですが、それもその1日だけですからね。365日ある中で1日だけですから。でも、それが1日でもできたっていうことについては、'17年はその1日があってよかったなと思います。それがもっともっと増えて、1週に1回とかになったら。それは強いですよね。そうなっていけるようにしたいと、いつも考えています。

松山英樹(Hideki Matsuyama)

1992年2月25日、愛媛県生まれ。4歳でゴルフを始め、プロ転向の'13年に史上初の新人年での賞金王となった。翌'14年から米PGAツアーに参戦して初優勝を飾る。参戦3年目で米ツアー通算5勝。世界ランクは一時、日本人歴代最高の2位まで上がった。181㎝、90㎏。

 

中嶋常幸(Tsuneyuki Nakajima)

1954年10月20日、群馬県生まれ。10歳からゴルフを始め、'75年にプロ入り。'85年には年間6勝を挙げて、日本で初めて獲得賞金が1億円を超えた。日本ツアー48勝は歴代3位。世界の4大メジャー全てでトップ10入りした唯一の日本人選手でもある。180㎝、88㎏。

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