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優勝を逃して泣いた日…松山英樹が3年半前に中嶋常幸に語っていた「メジャーへの夢」〈悲願のマスターズ制覇〉 

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2021/04/13 11:02

優勝を逃して泣いた日…松山英樹が3年半前に中嶋常幸に語っていた「メジャーへの夢」〈悲願のマスターズ制覇〉<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

松山英樹×中嶋常幸によるスペシャル対談が実現した

中嶋 そんなことがあったんだ。ただ、プロで直接、交流するようになったのはやっぱり飯田がきっかけかな。彼はプロゴルファーを目指していたんだけど、ある年齢になってプロは無理だという時に「お前、体があるんだから、トレーナーになったほうがいいんじゃないの」と勧めたんだ。それで修行して、トレーナーになったあとは、4、5人の選手を見ていた。その中で英樹とも接点ができたんだよね。ある時、飯田から相談を受けて、「松山がアメリカについてきて欲しいというんですが、どうしたらいいでしょう。中嶋プロが俺の体を見てくれ、っていうのであれば断ります。どうしたらいいのか意見を聞きたいんです」って言うから「そんなもん、お前、松山とアメリカに行って、優勝の手伝いしてやれよ」って送り出した。そうしたらそのシーズンのザ・メモリアルで初勝利しちゃった。もちろん英樹がすごいんだけど、飯田もすげえなって、思ったんだよ(笑)。

松山 僕はアメリカに行く前の年、プロ1年目で結構、怪我をしていたんです。飯田さんにはアマチュアの時から体を見てもらっていたこともあって、アメリカに行くなら、やっぱりしっかりした人に付いてもらいたいな、と思ったんです。

体力があってこその技と心

中嶋 よくスポーツでは心技体と言われるけど、僕は順番で言うと、体と技が優先で心は後だと思うよ。日本人はどうしても精神を優先したがるけど、そもそも技術を追求していく時点で、精神力はあるんだから。

松山 僕もそう思います。体が良くないと、そもそもゴルフができないですからね。しんどい時に頑張れるのは精神力かもしれないですけど、やっぱり僕は体力があってこその技と心だと思うんで。

中嶋 昔、僕が23歳でマスターズに出て、ボロボロになって帰ってきた後、チャリティーのプロアマで、巨人の川上(哲治)さんに「中嶋くんどうかね」と聞かれた。僕が「いや、まだ精神的に甘くて……」と答えたら、一言、「技術だよ」って。びっくりして「ボールが止まって見えるのも技術なんですか?」と聞いたら「技術だ」と。「どんな時でも打てる技術を身につけなさい」と言われて、それはその後、自分の座右の銘になったよ。それを突き詰めていくと結局、技術だって体力がないとできないんだよね。

松山 そうですね。僕がトレーニングをする一番の目的は怪我をしないためです。それでも怪我はするけれど、回復が長引くような怪我にはなっていないんで。

技術のコーチをつけない理由

中嶋 うちのアカデミーにも1回、来てくれたよね。松山選手がやっているトレーニングをみんなで習おうということだった。飯田から英樹が来れると聞いた時、子供達には直前まで黙っていたんだ。それで当日の朝、練習グリーンに集合させて「今日はスペシャルコーチがいるから」って呼んだわけ。あの時の「ワッ! 本物だよ!」っていう子供達の顔は凄かったな(笑)。その後のトレーニングも「吐きそう」って言いながら顔は嬉しそうで、みんな頑張っていた(笑)。英樹はどのトレーニングもフォームが綺麗で重心がぐらつかなかった。

松山 あの時はフォームがおかしかったらどうしよう、フラフラしたらどうしよう、とずっとプレッシャー感じてました(笑)。絶対に綺麗に見せなきゃいけないっていう。

【次ページ】 「『メジャーで勝ちたい』というのはありますけど……」

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