野球クロスロードBACK NUMBER
楽天・三木谷オーナーの打診で改名。
「卓丸さ~ん!」が増した逞しさ。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2019/02/20 10:30
楽天で進境著しい卓丸。今季からの新しい打撃フォームを体に沁み込ませようとしている。
平石監督の目にも留まった。
久米島キャンプ初日。そこには、逞しさを増した卓丸の姿があった。
フリー打撃。力強いスイングから放たれた打球が伸びる。グン……グン! 上空で二段階ホップしたと錯覚するような勢いで、何本も軽々と外野フェンスを越えていく。
卓丸の成長は、平石洋介監督の目にも留まっていた。チームに競争を促し、自分の口から特定の選手の名を挙げることが少ない指揮官が舌を巻いていたほどである。
「卓丸は非常によかったですね。まだ初日ではありますけど、オフから自主トレにかけてしっかり準備してきてくれたんだな、と。もちろん、他の選手もいい準備をして、いい仕上がりではありますけど、彼はちょっと違うように見えましたね」
「結果が出なきゃ意味ないんで」
監督が期待を寄せる。そのことを告げたところで、彼に浮かれる様子はなく、喜んでいる素振りも見せなかった。
「実戦が始まったわけじゃないですからね。取り組んできたことの手応えはありますけど、一軍で結果が出なかったら意味ないんで」
結果。育成選手から支配下選手まで這い上がった卓丸だからこそ、その言葉の重みを知っている。有望な新人が入団しようと、自分よりも実績を持つ選手が相手だろうと勝ち抜き、確固たる居場所を確立するしかない。
これから実戦が増え、レギュラーを狙う者たちのサバイバルが激化する。
登録名が変わり、選手としても生まれ変わった。勝負の1年。卓丸がキャンプで繰り返していた「やるしかない」が試される。