マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
カープファンにも広がる王者の余裕。
日南で感じたアドゥワ誠の雄大さ。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2019/02/16 17:00
一軍デビューとなった昨年、53もの登板数を積み上げたアドゥワ誠。広島の勝ちパターンを支える投手になれるか。
アドゥワ誠が身長以上に雄大に見える。
ブルペンに、カープの剛腕、快腕がずらりと居並ぶ。
野村祐輔、岡田明丈、九里亜蓮に、期待の若手・藤井皓哉、山口翔。その真ん中に、頭1つ半抜けて高いカープレッドの帽子が、ご存じ昨季の中継ぎエース・アドゥワ誠だ。
長い手足、全身のしなやかな連動……豪快な腕の振りなのに強く振ろうとし過ぎない。気分よさそうに振り下ろして、長い指が縫い目にしっかりかかったストレートが低めに構えたミットの“そこ”にきまる。
アドゥワの目がいくのは、手元のボールと捕手が構えるミットだけ。左右に先輩投手何人もしたがえて、いちばん左はじで無我夢中で腕を振る山口とはたった1年しか違わないのに、この落ち着きはいったいなんだ。
53試合、試合終盤の緊迫の67イニングを投げて6勝を挙げ防御率3.74。
修羅場を切り抜けてきた記憶が、1メートル96をさらに雄大に見せる。
はたちの貫禄。 経験が人を作る。